内容説明
「荒地」からまっすぐ天空へ、さらに遥か大海へ、隠された光りと声を再発見する言葉の壮大な試み。戦後の焦土に刻まれた鮮烈な第一歩。歿後十二年(十三回忌)を迎え、ますます輝きを増す詩人・田村隆一待望の全集、第一巻ついに刊行。
目次
詩(四千の日と夜;言葉のない世界;田村隆一詩集より;緑の思想;新年の手紙;死語)
散文(若い荒地;詩人たち―詩と批評Aより;作家たち―詩と批評Bより)
解説エッセイ 戦後の精神のもっとも孤高の詩人―田村隆一(吉増剛造)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1
再読、とは言ったものの、初期の田村隆一の詩業は「瞬間の王」を贅沢に消尽している。速度といい、強度といい、文明批評の弱さを補うような炸裂してゆく「青春」の詩情は、後の「感受性」の詩人たち(谷川、大岡など)を先取りしている。『荒地』においてそのような瑞々しい「青春」の詩であったがゆえに、それは加速度的に消尽されて、よくて『緑の思想』までで、それから弛緩して弛緩しきる。批評の方もぱっとしなかったので、エッセイの方に、それは詩においてもそうなんだが、「詩人」としての田村隆一を読むならこの巻だけで十分だろう。2017/05/18
飴玉
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田村隆一の初期の詩(「立棺」など)は好き。散文で鮎川信夫や森川義信の詩も取り上げられていて、おもしろかった。2014/06/29
0
再読。前に読んだのが7年前なことに驚く。『四千の日と夜』と『言葉のない世界』が「垂直」性=「瞬間の王」で才気走っているが、戦争体験の風化/水平化に応対するという意味でも『緑の思想』以後を考える必要があるのかもと最近は考える。田村隆一は詩を徹底して「形式」=「技術」の問題だと思っている節がある。戦争詩の問題を逆に「技術」の不徹底さと言い切ることは他の「荒地」の詩人にはない視点な気がするけどどうだろうか。高村光太郎の戦争詩の問題も「技術」の問題に還元したことなど新鮮ではある。2024/12/07
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