内容説明
泉鏡花の美と幻想の世界。物語への案内となるあらすじ・登場人物紹介/立体的な読解のための語注・イラストマップ付。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yn1951jp
39
づっしりと月下に光れる色好み魚道士鮟鱇から現れる、衣ものひだになよやかな、薄色衣の腰細う、頸、耳許、頬のあたり真白に俤(おもかげ)に立つたる美女(たおやめ)。裳を寛くばらりと捌いた、褄をこぼれて、袂からんで、月にも燃ゆる緋縮緬。…炎にまごう緋縮緬、と見れば燃ゆる鴨居を裾に、扱帯の色もありのまゝ、従容として、川浪にあらわれた其の美女。…月の魔力が支配する幻想の世界。2015/04/30
井月 奎(いづき けい)
31
このシリーズは本当にありがたく、素晴らしいのです。三冊目の本書は鏡花が心身を弱らせて、東京での生活が困難になり逗子に生活の場を求めていた際の創作を集めています。すなわち「月夜遊女」「春昼」「春昼後刻」です。鏡花の不思議話においても白眉な三作は夜の闇を濃くして、静寂を深くします。河出書房新社のきめ細やかな編集は鏡花の味わいを損なうことなく、読みやすさもよく考えられています。旧仮名で漢字のルビは新仮名づかいという実に凝ったことをしてくれています。巻末の解説が鏡花夫人、すずの養女である泉名月であるのも秀逸です。2018/12/31
凛風(積ん読消化中)
8
『月夜遊女』『春昼』『春昼後刻』の3篇を収める。『月夜遊女』の飄々とした可笑しさが大好き。ただ、この作品については、もう一冊絵草紙を持っていて、そちらを読んだので、ここでは『春昼』と『春昼後刻』を。2篇として収められてはいるが、章立ても繋がっているので、1篇として見て良いと思う。美しい人妻と青年の悲恋と言ってしまえば、それまでなのだけれど、お互いの夢に出て、不思議な時を過ごすあたりが、まさに幻想譚。小野小町と和泉式部の歌を介して想いを伝えるところがまた美しい。ただ、歌を託された少年のその後が痛ましい。2021/09/07
Sey
1
この全五巻の選集は旧字体を新字体に換えたり物語中に出てくる比喩表現などの解説がよく書かれていて、鏡花初心者の私としては何かと助けになりました。これがなければ「春昼・春昼後刻」に度々出てくる源氏物語などからのオマージュがわからないままだったり、他のお話でもいろいろともったいない読み方をしていたかもしれません。この選集では他に龍潭譚や高野聖などの幻想物が各巻に収められていますが、なぜか草迷宮が入ってないのが個人的に不思議な所です。今ではあまり見かけませんが、見つけたら読んでみて損はないかと思います。
Takashi Edamoto
0
頭の中で音読しないように気をつけているが、文字を追っているだけで節回しが出来て、自然と講談調に読んでいる。 分量は少なく、読みやすいのに時間が掛かるのはそのせいか。2013/09/05