目次
東西不思議物語
洞窟の偶像
記憶の遠近法
スクリーンの夢魔
機械仕掛のエロス
補遺一九七七年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梟をめぐる読書
10
七〇年代も後半に入ると、過去10年分の著者の仕事を集成しようという気運が俄かに高まり始める。本巻では『洞窟の偶像』『スクリーンの悪魔』『機械仕掛のエロス』等の著作がそれに当たるが、そうしたものを措いて注目作を探すなら、やはり『記憶の遠近法』に尽きるだろう。遠近感の巧みな操作によって著者の少年時代の私的な回想がのびのびと綴られた本作からは、開放した窓から入ってきた風が書斎の埃を一挙に吹き払っていくような清々しささえ感ぜられ、『胡桃の中の世界』以来の澁澤龍彦の〝変貌〟を如実に伝えるものとなっている。2013/07/20
季奈
0
フランス文学者として名高い著者であるが、五十歳に差し掛かる頃になってから、東洋の奇譚にも本格的に目を向け始め 、その集成として『東西不思議物語』がまとめられた。 ただ、食指が動かなかったというわけではなさそうだが、漢文に苦手意識はあったそうである。 二万冊近い蔵書がある書斎には、欧文のものを含め画集を含めても五千冊、六千冊ほどは上古から江戸期にかけての日本の典籍の活版本と民俗学の研究書だったことからも窺えるように、澁澤は文学世界を達観せしめんと考えていたのかもしれない。2021/06/09