内容説明
中東情勢を読み解くカギは「哲学」にあった。ほんとうの世界レベルの教養へ。もうひとつの哲学史を。衝突する2つの文明は互いの思想をどのように捉えてきたのか?相違点、類似点…その本質に日本人イスラーム法学者が迫る!
目次
第1章 ソクラテス、プラトン、アリストテレスとイスラーム哲学(西洋哲学に多大な影響を与えたイスラーム哲学;プラトン・アリストテレス哲学と一神教の親和性 ほか)
第2章 イスラームと近世哲学(デカルトの心身二元論は後期イスラーム神学と一致;心身二元論にはないイスラームの「倫理性」 ほか)
第3章 イスラームと近代哲学(近代哲学は「問いを立てる自分とは何か」を疑う;認識するのは「心」ではなく「脳」とされたのは比較的最近 ほか)第4章 イスラームと現代哲学(神学的に重要なヴィトゲンシュタイン「論理実証主義」;「すべてのたこ焼きにはたこが入っている」という全称命題は証明できるのか ほか)
著者等紹介
中田考[ナカタコウ]
1960年生まれ。イブン・ハルドゥーン大学客員教授。1983年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。東京大学文学部宗教学宗教史学科卒業。カイロ大学大学院文学部哲学科博士課程修了。在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、同志社大学神学部教授などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
63
日本人哲学者でイスラム信者、という珍しい立ち位置。 イスラムの思想家が馴染みがなくて難しく感じました。 西洋哲学に関しては概説的。フランス現代思想にはあまり言及せず2024/06/09
ta_chanko
21
ニーチェ曰く、現代はニヒリズムの時代。神なき価値なき社会で人々はいかに生きるのか。著者はイスラームが最後の救いだと述べる。確かに、人生の指針が見つからず、人々は(自分も)迷いながら生きているように思える。お金?学歴?仕事?趣味?。また、欧米諸国が掲げる自由・平等などの「普遍的」価値観も、独善的で、実は差別的で、押しつがましく感じられることも多い。イスラーム的には、人を裁けるのは神のみ。難解な内容だが、西洋哲学を相対化して考えることができる。2024/04/12
月をみるもの
15
存在(Sein)と当為(Sollen)をわけるとしたら、自然科学は前者を、社会科学・人文科学を主に後者をあつかう(まあ「科学」と銘打つからには「存在」もある程度はあつかう、、のかな)。「存在」は人間存在を離れた客観的な世界であり、当為は人間社会の中でのみ通用する虚構というか物語であるという解釈が普通だと思うのだが、ハサン先生たち宗教家にとっては逆のようだ。世界を動かす因果律を理解するより先に、「これやっちゃダメ、絶対」という命令を理解せんといかんらしい。子育てした後だと、なるほど、と思わないこともない2024/02/12
Myrmidon
8
まあ仕方ない部分も大きいが、「イスラームから見た」というより「中田考から見た」かな。古代~現代(レヴィ=ストロースやフロムあたりまで)の主要な哲学者・思想家を取り上げて論評するスタイルだが、ハサン先生の主義・嗜好が前に出すぎて粗雑な内容になってしまい、「ハサン先生の哲学自由放談」的な趣き。「前期ウィトゲンシュタインの特徴は論理実証主義です」とか、専攻の方が聞いたら呆れるか笑うかだと思う。真面目にイスラームと西洋哲学の関係を勉強する人よりも、ハサン先生のファン向けのエッセイ集くらいの位置付けか。2024/02/11
彼方から
4
がっかりする内容だった。前半、イスラーム文化圏と西洋がガッチリ関わるあたりは面白いけれど、後半になると西洋哲学に対する文句をぶつぶつ言うばかりで、全然イスラームの話にならない、なってもどうせわからないでしょとばかりにサッと流される。著者がイスラームについて語るのに飽きたのか、西洋哲学に対して可愛さ余って憎さ百倍なのか、自分が最近感じていることを開陳する場がないのかわからないが、もう少しちゃんとイスラームの話をしてもらわないと「ほんとうの世界レベルの教養へ」いけないよと思う。2024/03/02