出版社内容情報
テレビ版放送開始から26年、完結を迎えた大ヒット作品『エヴァンゲリオン』を詳細に読み解く。新たな戦後日本精神文化史の誕生。
内容説明
一九九五年に始まった庵野秀明監督作品『新世紀エヴァンゲリオン』は、衝撃の最終回を引き金に、一大ブームを巻き起こす。そして二〇二一年、『エヴァ』はついに完結した。四半世紀の間、庵野は『シン・ゴジラ』など実写作品も挟みながら、「虚構と現実」のはざまで、何を求め続けたのか。庵野を中心に制作者の発言を縦横に参照しつつ、その軌跡を論じる試みは、おのずと戦後日本精神史にして「オタク」の成熟の物語となるだろう。
目次
まえがき―『エヴァンゲリオン』という巨大な「インパクト」
1 往相(『新世紀エヴァンゲリオン』;『新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に』)
2 儀式(『ラブ&ポップ』;『GAMERA1999』;『式日』 ほか)
3 還相(『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』;『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』;『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』 ほか)
著者等紹介
藤田直哉[フジタナオヤ]
1983年、札幌市生まれ。批評家。日本映画大学准教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻修了。2008年、「消失点、暗黒の塔」で第3回日本SF評論賞選考委員特別賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぼっちゃん
47
息子お薦め本。TV版、劇場版とすべて見てきたが理解できていなかった部分が多くあったが、そういことかと気づかされた部分が多くありました。またその時代の出来事などが物語にも大きく影響していたのが分かった。2023/06/11
akihiko810/アカウント移行中
27
著者の藤田直哉氏とエヴァの関わり合いを軸に、時系列順にTV版、旧劇場版、新劇場版、シン・ゴジラ、シン・エヴァについて解説。 印象度B+ オタクの「実存」を描いたとされるエヴァシリーズの解説を、エヴァによって「これは僕だ」と人生を決定づけられた著者(苦笑)が解説する。本書はエヴァ論だが、実質は庵野論であり、庵野のオタク観がどう変遷していったかの物語である。 「シン」を観た時の感想は、「随分真っ当な落としどころだな」であり、「庵野も結婚して<大人>になったんだな」であった。本書の結末もやはり「大人として2023/10/25
ざっく
17
最近は、バタバタしていて本屋と図書館に行けていなかったため、久しぶりの読書。庵野氏がどこまで意図を持ってエヴァンゲリオンを作ったのかはわからないが、本人すら気づかないことを言語化するのが評論家の仕事なのだろう。自分も、その人自身が気づいていない意図や傾向に気づけるようになりたいな。映画や本の感想を書くのは、読書感想文程度の文章量でも難しいのに、それを一冊の本にまとめてしまうのはすごい。単純に、そのコンテンツにかける熱量と努力の量が段違いであるのだろうけど。自分は、なかなかそこまでできないな。2021/07/27
Isamash
16
東工大博士藤田直哉・日本映画大学准教授の2021年6月発行著作。14歳でエヴァに出会った著者がTVシリーズ、旧劇場版、幾つかの実写映画にも触れエヴァンゲリオンのメッセージを読み解こうとした意欲作。自分にとっての幾つかの謎が解けてスッキリとし感謝。ネルフは現場の作り手でゼーレは制作委員会や放送局の象徴。TVシリーズでの初号機覚醒時のゲンドウと冬月の「始まったな」「ああ、全てはこれからだ」(19話)は作者らの受け入れやすい内容からの脱却の狼煙。ミサトと加持のセックスシーンも18:30アニメだが挿入(20話)。2022/01/29
しゅん
12
新たな批評的視点の提示というより、90年代に溢れたオタク的エヴァ論を「シン」まで推し進めた教科書的な感じ。割と苦手な読み解きなはずだけど、なぜか読んでて楽しかったのは展開と構成がうまいからか。ただ、「ショックドクトリン」の用法は違和感。本著だと「世界を変えるためのショック療法」みたいな書き方だけど、元々は「大きな災害などが起きた時に便乗して無理やり政策を通す政治方法」として否定的に用いられた言葉のはずだから、なんの注釈もなく意味を変えるのはよろしくないと思った。2021/08/11