アレクサンドリア四重奏〈1〉ジュスティーヌ

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  • サイズ B6判/ページ数 339p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309623016
  • NDC分類 933
  • Cコード C0397

内容説明

このエーゲ海の孤島に、ぼくはぼくたちの心を引き裂いたあの都会から逃れてきた。ぼくをメリッサに会わせ、そしてジュスティーヌに会わせたあの都会―ぼくがメリッサを見出したとき、彼女はアレクサンドリアの淋しい海岸に、性の翼を破られて、溺れかかった鳥のように打ち上げられていた。彼女の明るいやさしい眼差しはぼくを幸せにした。それなのに、やがて出会ったジュスティーヌの仄暗くかげる凝視に、ぼくは抗うことができなかった。メリッサとジュスティーヌの夫を不幸にすることがわかっていても。ジュスティーヌがある日こう言ったのを思い出す。「わたしたちはお互いを斧の代りに使って、本当に愛している人たちを切り倒してしまうんだわ」しかし、ぼくはいま、あの埃にまみれた夏の午後から遠く離れたいまとなって、やっと理解した。裁きを受けるべきはぼくたちではない、あの都会なのだと―。

著者等紹介

ダレル,ロレンス[ダレル,ロレンス][Durrell,Lawrence]
1912~1990。イギリス系植民者の息子としてインドに生まれる。11歳のとき、父の意向でイギリス本国に渡り、カンタベリーの寄宿学校に入学するが、学校の教育が性に合わず退学。個人教授を受けながらケンブリッジ大学の入学試験を試みて失敗する。その後、不動産屋で働いたりナイトクラブでピアノを弾いたりするが定職にはつかない。1935年23歳で、家族とともにギリシア領コルフ島に移住。数年間この島で暮らしてから外交官生活に入り、アテネ、カイロ、アレクサンドリア、ロードス島、コルドバ(アルゼンチン)、ベオグラードなどに滞在する。1938年、小説『黒い本』をパリにて発表。T・S・エリオットやヘンリー・ミラーに絶讃されて作家としての地位を確立する。1953年、キプロス島に住まいを移し、『ジュスティーヌ』の執筆を開始、1957年にはこの島のルポルタージュ『にがいレモン』でダフ・クーパー賞を受賞する。同年、南フランスに移住。ここを永住の地として創作活動に専念し、傑作『アレクサンドリア四重奏』全4巻をまとめる

高松雄一[タカマツユウイチ]
1929年、北海道室蘭市に生まれる。東京大学文学部卒業。イギリス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

296
アレクサンドリア―2300年を生き延びた都市。そこは地中海の結節点であり、また吹き溜まりでもあった。そして、建設の当初から今に至るまでコスモポリタンの地であり続ける。この地での過ぎ去った想い出を追想する「ぼく」。ジュスティーヌは、「ぼく」にとってはまさに"Femme fatale"であっただろう。ネッシムにとってもまた。読んでいる途中でもアレクサンドリアの幻惑に酔うかのようだ。読後も、アレクサンドリアは幻であったかのように思える。最後のクレアの手紙のリアルさがかえってその想いを増幅する。焦燥は消えない。2016/05/21

遥かなる想い

144
アレクサンドリアという都市を舞台に、 彷徨う ぼくの 精神の物語である。 メリッサという恋人がありながら、 人妻 ジュスティーヌに惹かれていく ぼく …ひどく 気だるい雰囲気が 異国的である。ぼくが語る四人の物語…実体がなく、まるで お伽話のようなのだが…時間と話が錯綜し、 読者も夢遊状態になってしまうようだが、 これも著者の意図通りなのだろうか? そんな印象の作品だった。2019/01/14

ケイ

123
終盤あたりでようやく四重奏の意味に気付いた。なぜ彼女の話をあまりしてくれないのかと思ったら、これは「ジュスティーヌ」の巻だったのだ。4人の登場人物たち達が織りなす話を、それぞれを主役に、4つの巻に分けて書いている。4人は正方形の4点にあたるが、それぞれの点を結ぶ線は1点から残りの3点へ向かう。それは恋愛感情も交えた線である。とくに面白い部分があるわけでも、盛り上がりがあるようにも思われないが、読み始めるとなぜかとまらない。早く2巻を探してくなくちゃ。2017/07/02

まふ

101
著者の「アレクサンドリア四重奏」シリーズの第1巻目でG1000ではこの作品のみを選んでいる。国際都市アレクサンドリアに集まる雑多な人種の社会での恋愛物語。英国人の牧師であり小説家を目指す「私」がユダヤ人の富豪婦人ジュスティーヌに会い、目くるめく愛欲の生活を経て彼女の失踪とともにすべては終わりを告げる。アレクサンドリアには雑多な国籍、人種、文化の人々が寄り集まる。何が起こっても驚かない人々の町だ。ジュスティーヌは突然失踪するが、この物語の終わり方としてまことに相応しい幕切れであった。G1000。2024/01/31

榊原 香織

85
恩田陸が好きな小説として挙げていた。 失われた時を求めて、にもちょっと似てるし、チボー家の人々、も少し思い出させるし、まったく、フランス人は恋愛ばっかなんだから、と思ったら、作者はイギリス人。 英国統治下のアレキサンドリア。 相対性理論による言語連続体、と訳者は言う。 なるほど分かりにくいw これから面白くなるのか? 四重奏の1. 2021/08/28

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