内容説明
第一次世界大戦直後(1918~19=大正7~8年)のベルリンへ下心をもってやって来た日本人旅行者が赤い帽子のドイツ娘と出会い、一回の食事代にもならないほどの代価で、森の中で立ちまんにおよぶ。だが、満たされない思いの旅行者の男は、二日後、赤い帽子の女をホテルへ誘い、羽化登仙の悦楽に耽る。濃密な愛欲絵巻を官能美豊かに描いた名編ほか五編。
感想・レビュー
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澤水月
8
伝・芥川筆の艶本とされる表題作レベル高!語り手「私」はココア好み情事での汚れに神経質な面あったり「第一次大戦敗戦国ドイツ女性が日本人に縋る」背景細かく描写、明らかに鴎外「舞姫」意識した箇所もある文学。情交場面も類書と各違いの筆力。自分はここの所、芥川纏め読みしており用語など彼でもおかしくないと思えた(別人説が優位らしいが夢はある)。芥川、与謝野夫妻、大杉栄と野枝に辻潤らが性情報交換「相対会」に属していたまでは事実だし…漱石門下内田百閒も春本試みた記述が最新の評伝にあり今後復活あるだろうか。表題作電書あり→2023/12/19
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- 和書
- 行方不明者 文春文庫