内容説明
本書は、古代スラヴ人の思考にたちかえって人間の生と死を見るとき死の陰から浮かびあがってくる吸血鬼の存在を、できるかぎりの文献を渉猟し、スラヴ側の直接的資料に依拠しつつ、アニミズム的死生観に起因する夢魔・病魔・人狼信仰との関連において解明する画期的労作。
目次
序章 吸血鬼の原郷世界としてのスラヴ世界
第1章 スラヴ吸血鬼信仰
第2章 スラヴ吸血鬼説話
第3章 スラヴ夢魔信仰
第4章 スラヴ死神幻想
第5章 スラヴ人狼伝説
第6章 文学的吸血鬼
終章 一つの結論―吸血鬼バルカン・スラヴ起源説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とんこ
20
再読。吸血鬼の祖型は、バルカン・スラヴ民間伝承の中にある。吸血鬼は墓の中から帰還する死者であり、生者の血を吸い、時には妻の元を訪れて子供をつくる。吸血鬼だけでなく夢魔、病魔、人狼信仰など、スラヴのダークで異国情緒ある民話や信仰をたっぷり紹介してくれるので、難しい考察部分を読み飛ばしても非常に面白く読めます。2024/12/11
みどりん
1
私には難しく感じたが、時代や文化の違いを感じることができ興味深く読んだ。2017/06/15
uburoi
1
だいぶ前に入手していてようやく読むことができた。最初ちょっととっつきにくいところから始まる。スラブ地域について歴史の変遷を概略したもの。これを注意深く読んでいるとあとが楽だ。2017/04/30
masabi
1
吸血鬼を創作ではなくスラヴの民間伝承にそのルーツを求めた労作。吸血鬼を帰還した死者としその他夢魔や人狼の伝承と混じり多才な能力を得ることになった。伝承が20世紀まで畏れられていたことに驚くとともに日本でそこまで息の長いものがあっただろうかと考えた。伝承は地域の特性を色濃く反映する。吸血鬼の他にも民間伝承が収録されており興味がつきない。気まぐれで立ち寄った古本屋で見つけることができてよかった。2013/04/17
桜子
1
ヴラド公以前のドラキュラの祖像をスラヴ民間信仰のなかに求めた画期的労作。数多くの民話が収録されていてすごく面白かった。なかでも、死者が受肉するという伝承が、ドラキュラの変身能力の設定に寄与したことは疑う余地もない。ほかに夢魔・死神・人狼のヴァリアントも載せている。不気味好きな人の寝物語にもぴったりな一冊。2011/05/19