内容説明
艶本や浮世絵を見ないで江戸文化が語れるのか。浮世草子に好色本と呼ばれる艶本があるように、骨稽本、洒落本、人情本、さらには浄瑠璃や歌舞伎の台本にも艶本がある。江戸文学を彩る戯作者たちはほぼ例外なく艶本の傑作を残している。本書は、文学史家たちに評価されないまま埋もれていた厖大な艶本資料をジャンル別に分類・解読し、江戸文学史を根本的に書き変えた野心的労作である。
目次
起の章 汲めども尽きず
承の章 どっこい生きている(抹殺本の復活)
転の章 各作品の展望(浮世草子の艶本―豆男物の珍本『豆右衛門後日女男色遊』;読本の艶本―『西廂記』の翻案『秘戯艶説筑紫琴』;噺本の艶本―葛飾北斎の若描き『間女畑』;滑稽本の艶本―女護の島物の逸作『恋湊女護生娘』;洒落本の艶本―二世焉馬の傑作『恋相撲四十八手』;人情本の艶本―松亭金水の代表作『春情心の多気』;黄表紙の艶本―恋川春町を死なせた『遺精先生夢枕』;合巻の艶本―式亭小三馬の処女作『玉の春』;根本〈ねほん〉の艶本―濡事名場面集『十襲秘蔵春閨情史』)
結の章 画文一体の研究