内容説明
日常がディストピアとなった現代を生きる人々の代えがたき瞬間を、見事なリリシズムとユーモアで描き出す。韓国文学の「顔」である作家による、数々の文学賞に輝いた作品を収録した、代表的短編集。
著者等紹介
ファンジョンウン[ファンジョンウン]
1976年ソウル生まれ。2005年、短編「マザー」でデビュー。2010年『百の影』(オ・ヨンア訳)で韓国日報文学賞、2012年に『パ氏の入門』(未訳)で申東曄文学賞、2014年「誰が」(本書収録)で李孝石文学賞、2015年『続けてみます』(オ・ヨンア訳)で大山文学賞、2017年「笑う男」で金裕貞文学賞、『ディディの傘』(斎藤真理子訳)で萬海文学賞等、数々の賞を受賞するほか、「小説家50人が選ぶ今年の小説」第1位に2019年、2020年の連続で選出
斎藤真理子[サイトウマリコ]
韓国語翻訳者。2015年にパク・ミンギュ『カステラ』(共訳)で第一回日本翻訳大賞、2020年にチョ・ナムジュ他『ヒョンナムオッパへ』で韓国文学翻訳賞、2025年にハン・ガン『別れを告げない』で読売文学賞(研究・翻訳部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
26
8編の短編集。格差や暴力、貧困、喪失など韓国文学らしさに満ちた作品で、多くは後悔とその後遺症が余韻となっている雰囲気。しんどいながらも力強く頼もしい胆力を感じ、著者の筆力の逞しさに希望を抱ける。中でも、死んだ恋人との思い出を書き始めようとするが、なかなか筆が進まない老婦人の物語「ミョンシル」が、とてもよかった。「人が死んだあとも終わらない何かがあるということ」という想像が、どれほど慰めになり美しいかについて考えるミョンシル。馳せる思いの心理描写が素晴らしかった。2025/04/29
R子
21
短篇8本を収録。どの短篇も密度が濃くバラエティに富んでいて良かった。中でも「ミョンシル」が好き。ラストで涙した。大切な人の死を受け入れること、覚えていること。それは過去を振り返りひたすらに祈ることだ。記憶は美しくて、けれど不意に空しくなって苦しくもなる。静かな愛を感じる読後感だった。感情の歪んだ発露としての笑いを描いた「わらわい」は不気味でリアル。抑え込んだ感情の発散(爆発)という怖さでは「誰が」も嫌な話(褒め言葉)だ。2025/03/15
チェアー
7
どの作品も暴力の陰惨な匂いが立ち込めている。その暴力は虐げられているもの同士でふるわれている。 読んでいてつらい。別れや死がそこここに時限爆弾のように仕掛けられている。しかもそれは読み手に見えるところに置かれている。 2025/04/02
石
3
この短編集のテーマを挙げるなら「不安」だろうか 現在、そして未来に対する 誰もが感じるであろう感情を繊細な文章で書かれると読む側としてはいたたまれなない気持ちになる 作風としては露悪的にしたハン・ガンといった感じか2025/04/05
カナコ
1
「唐辛子畑に唐辛子摘みに行こうと言われ、行くと答えた。」という、最初の始まり方に心をぐっと鷲掴みにされてしまって、これは買わねばなるまい、と購入。 最初のお話がかなり唐突に終わったので、すこしびっくりしたけど、「誰でもない」というタイトルを考えるとそんなに不思議ではないのかも。それぞれの人生はその先も続くものなので…。 本の前半は比較的読みやすくて、後半のお話に行くにつれて、畳み掛けるような怖さがある。う〜む味わい深い…。 2025/04/07
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