内容説明
プラハの古書店で見つけた菫色の本に誘われ“もうひとつの街”に迷い込んだ“私”。地下礼拝堂の怪しい儀式、鐘楼を泳ぐ巨大なサメ、ジャングルと化す図書館、民族叙事詩を朗誦する鳥…。街の秘密を探るうち、“私”はこの異形の楽園に魅了され―。現代チェコ文学の鬼才による、幻惑と陶酔の悪魔的冒険譚。
著者等紹介
アイヴァス,ミハル[アイヴァス,ミハル] [Ajvaz,Michal]
1949年、プラハ生まれ。作家、詩人、哲学者。ロシアからの亡命一家で育ち、カレル大学で美学を修学。幻想文学の系譜を推理小説、SF、旅行記と融合させた比類なき作品を発表する一方、理論研究センターでデリダ、フッサールについての研究を行う。マグネジア・リテラ賞、チェコ国立文学賞など、多数の文学賞を受賞
阿部賢一[アベケンイチ]
1972年生まれ。チェコ文学者、翻訳家。東京大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
69
初めての著者だが初めから期待を抱かせる。 例えば冒頭2頁目:とてつもなく滑らかな本の背の本を取り出すと書名も著者名も記されていなく中は見たことがない文字が並び、見返しの文様は雪の渦のように思え、元あった場所に戻そうとしたが元の隙間はすでに埋まっていた。……と! 実際の生活の近くにある幻想的世界の設定に引きずり込まれる感覚があって、文中の場所に聖地巡礼でもしてみたい気分になる。2024/12/14
NAO
58
雪の降りしきるプラハ、作者は古書店で見たこともない文字で書かれた菫色の本を見つけた。この本との出会ったことから、語り手はもうひとつの街の存在を知り、惹かれ、その街を求めるようになる。読んでいてカルヴィーノの『見えない都市』に似ていると思ったら、解説でも言及していた。2024/11/12
Porco
16
一つの町とそれの鏡合わせのようなへんな町。国内の作家だと安部公房のようなシュルレアリスムさ溢れた奇妙なもう一つのプラハの町での旅が描かれている。しかし、哲学的モチーフや要素は出してはいるもののそれに対してガッツリと読者に思考を巡らさせようとは思えず、筒井康隆のように常人には理解困難なくらい高い技術による言葉遊びをただ作者が楽しみきった結果作られた本を読んだように感じた。2025/02/08
おだまん
12
楽しみにしていた文庫版での再読。再読とはいっても訳が全面的に見直され、より哲学的でシュールレアリスムが押し出されて想像の余地が広がり、作者さんの意図に沿ったものになっていると感じました。でも難しいこと抜きにこの世界観が大好き‼︎2024/10/19
ぷら
11
やー…すごいものを読んだ。なんという絶え間なきイメージの奔流、詩という技法で書かれた小説のよう。 古書店で手にした、誰も知らない文字で書かれた菫色の装丁の本。そしてプラハの街並みと重なり始める、もうひとつの街。 想像力が蕩けそうだった。こういうのを読んでみたかったんだ。 改行がほぼない文章は久しぶりだったけど読みやすい。けど意味は全く解らない、解らなくていい。絵画に言語がないのと同じだ。 所々で抽象に託した著者のメッセージがあった気がしたけれど、私の読解力では受け取りきれず無念だった。これはまた読む。2025/02/02
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