内容説明
ヘンリー・チナスキーはさまざまな職を転々としながらアメリカを放浪する。雑誌の配送、犬のビスケット工場、蛍光灯の取付け、イエロー・キャブ…。単調な労働の果てには、手ひどい二日酔いが待ち受ける。ユーモアと陽気な女たちに助けられながら、短篇を書いて編集部に送るも原稿はたいてい不採用。二十代ブコウスキーの体験をもとに綴られた人間の自由をめぐる物語。映画化。
著者等紹介
ブコウスキー,チャールズ[ブコウスキー,チャールズ] [Bukowski,Charles]
1920年ドイツ生まれ。3歳でアメリカに移住。LAシティ・カレッジ中退ののち全米各地を放浪、24歳で最初の小説を発表する。その後は郵便局などに勤務しつつ創作活動をつづける
都甲幸治[トコウコウジ]
1969年福岡生まれ。早稲田大学文学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shun
38
自堕落な生活に勤労意欲も低いヘンリー・チナスキーの放浪生活。他のブコウスキー作品同様に著者の体験が投影されたであろうチナスキーという男もまた滅茶苦茶な生き方をしているように映る。よく言えば自然体の文学。彼の振る舞う自由な行動にはダメ人間のありのままの姿と偽善すら感じさせない率直さがあり、時にはユーモアもある。主人公は何度も仕事をクビになりながらも生きるため何度も新たな職に就き、それでも勤労意欲は湧かず態度も改めないから相変わらずその日暮らしの生活を続けている。彼は食べるために働く、意義なんてその程度だ。2024/08/04
GO-FEET
4
《約三○年前、大学院を出たばかりの僕がやっとの思いで出した初の翻訳書である『勝手に生きろ!』が、こんなにも長いあいだ、読者に愛され続けることになるとは当時、思いもよらなかった。ただ仕事や家族や愛について、何一つ包み隠すことなく正直に語り続ける本書が自分の心に刺さったという実感だけを頼りに、ひたすら訳文を紡いだことだけを憶えている。そして僕は誇張なしに、この本のおかげで、文学で生きていこうと決めた。もちろん明るい見通しなんてまるでなかったが、一歩ずつ歩み続け、気づけば今になっていた。》(新装版訳者あとがき)2024/08/30
さぶろうの領土
4
酒、女、タバコ、ギャンブル、仕事。やさぐれた男の、どうしようもない生き様。そんな内容とは裏腹に、軽妙な文体はリズミカルで小気味いい。『郵便局』を読んだ時に、もう一冊読んだら好きになっちゃうだろうと思ったけど、案の定ブコウスキーという作家を好きになってしまった。普段は気に入った文章・表現があると、そのつどフセンを貼るんだけど、文章のリズムを崩したくなくて全然貼れなかった。あとからまとめて貼りに行って「なんで俺はこんな文章にフセン貼ろうと思ったんだ?」と苦笑いしながら、結局フセンだらけにした。2024/07/07
梅子
3
生々しく描かれる共依存的な性交渉や中毒症状を呈す痛飲、生真面目な労働者を嘲笑にする感覚、過酷な労働を我慢するくらいなら文無し野宿を選ぶような性格、全てが近代資本主義社会では壊滅的にマイナスに働き、チナスキーは死ぬほど苦労するが、それ自体社会批判のメタファーになっている。同時に、1つ2つ仕事を失ったって人間何とか生きていけるもんなんだと妙な勇気をもらえた。最高の労働者文学。と、思いきや、後書きによると彼の脱力した文体は豊富な読書から生み出されたものらしく、やはり声なき声を上げるにも読書は必要なのだと痛感。2024/08/12
袖崎いたる
1
p150-151に聖書の話題。「聖書は『汝の隣人を愛せ』って言ってるわ」「そりゃ、ほっとけって意味だ。」とあって笑う。他にも最初にある両親との諍いでは笑わせてもらった。p29だ。ペルシャ絨毯にゲロった直後、「おふくろが絶叫し、父親が突進してきた」ここで噴き出したわ。p223ではピカソに会ったことのあるフランス人?が出てくるんやが、このくだりは興味深かった。「で、ピカソはなんて言ったんだ?」「こう言ったよ。『おれがあんたの絵について数えられることはなにもない。あんたは自分でやるしかないんだよ』」「ふーん」て2024/10/12