内容説明
二十世紀初頭、三重帝国に不可思議な事件が起きたとき、帝都ベラの誇る博覧強記の法学博士、医学博士、文学博士ほか何でも博士のエステルハージが動き出す。ミステリ、幻想譚、怪奇小説、喜劇…ジャンルの壁が融解して幽玄なベールに包まれた、唯一無比の異色作家の代表作。世界幻想文学大賞受賞
著者等紹介
デイヴィッドスン,アヴラム[デイヴィッドスン,アヴラム] [Davidson,Avram]
1923年、ニューヨーク州生まれ。作家。「さもなくば海は牡蛎でいっぱいに」でヒューゴー賞、「ラホール駐屯地での出来事」でMWA賞、「ナポリ」で世界幻想文学大賞短編部門、『エステルハージ博士の事件簿』で世界幻想文学大賞アンソロジー・短編集部門、世界幻想文学大賞生涯功労賞を受賞。93年逝去
池央耿[イケヒロアキ]
1940年、東京生まれ。翻訳家。国際基督教大学教養学部人文科学科卒。2023年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shun
35
初読みデイヴィッドスン。著者の傑作としておすすめに挙がる本作は、架空の国家を舞台に博覧強記の名探偵が様々な謎や怪奇現象を解き明かす探偵小説です。その国の名はスキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三重帝国と言い、名称からして東欧あたりが舞台であろう。地理的にオチデントとオリエントが交錯し独特な文化的土壌を形成していそうな架空の国、そして探偵役は数多くの博士号を有し国家有数の名士として名高いエステルハージ博士という魅力的な人物だ。読んでいると懐かしさを感じる一昔前の怪奇探偵小説の雰囲気に浸れました。2024/02/19
rinakko
13
再読。やはり面白くて隅々まで大好きだった。ペダンティックではありつつどこか飄然とした作風が、エステルハージ博士その人の風変わりな魅力にも重なる。一筋縄ではいかない三重帝国の人々が織りなす、一筋縄ではいかない怪奇な事件とその謎の行方…。お気に入りは「神聖伏魔殿」(なぜか皆“縫い取りのあるチョッキを掴んで…堆肥の山に倒れ込む”)、「イギリス人魔術師 ジョージ・ペンバートン・スミス卿」、「真珠の擬母」(オンディーヌ!)。そして今回は、「夢幻抱影 その面差しは王に似て」の夢の一片を追うような儚さがあらためて沁みた2024/03/15
氷沼
4
架空の国を舞台にした探偵小説風幻想SFとでもいった感じ。探偵小説風幻想SFであるなら、自分にはもってこいの筈だが、文章が分かりづらくて晦渋でよくわからない。 自分には全く合わなかった。合わないというより、よく分からない、か。 頑張って読了したけど、自分は楽しみたくて読書しているので、「頑張って」読んでる時点で楽しめてはいないなと思う。 一般的には高評価なので、どういう作家が好きな人向きかは分からないけど、試しに読んでみてもいいのかもしれない。2024/03/19
ふゆきち
3
分かりやすいのもあれば何が何だかな作品も。やっぱり変な小説。何が何だか筆頭の『神聖伏魔殿』にあるエピソードが妙に印象的に残ります。「全身にふるえが来て堆肥の山に倒れこむ」2024/04/24
迦陵頻之急
3
東欧の架空の帝国を舞台に博覧強記の博士が怪事件に挑む、ブラウン神父とパタリロを混ぜ合わせたようなシリーズ。邦題はミステリぽいがむしろ怪奇ハンターの趣。怪事件を捜査して合理的解決に導くといった体の挿話もある一方、超常現象やら錬金術やら疑似科学やらもやりたい放題。ドタバタ喜劇あり、人情噺あり、ストーリー自体は難解ではないが、叙述が曲者。架空の多民族国家の蘊蓄に埋め尽くされた、暗示的な記述から、結局何がどうなったのかを読者が読み解かねばならない。「どんがらがん」も大概変な短編集だったが、当作は一段と晦渋な作風。2024/02/13