内容説明
奇想天外なラジオドラマでリスナーを魅了する天才シナリオライター、ペドロ・カマーチョ。かたや、小説家志望の「僕」は義理の叔母フリアと恋に落ちるが、一族の猛反対に遭う。やがて、精神に変調を来したカマーチョのドラマは錯綜し、虚構と現実が混じってゆく…。ノーベル文学賞作家が放つ、半自伝的スラップスティック青春コメディ。
著者等紹介
バルガス=リョサ,マリオ[バルガス=リョサ,マリオ] [Vargas Llosa,Mario]
1936年、ペルー生まれ。ラテンアメリカを代表する作家。2010年、ノーベル文学賞受賞
野谷文昭[ノヤフミアキ]
1948年、神奈川県生まれ。東京大学名誉教授。ラテンアメリカ文学研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
65
若い頃はガルシア=マルケスばかりに目が向いていたが、「悪い娘の悪戯」を読んだ辺りからリョサにもシフト。「天才シナリオライターによる奇想天外な放送劇と、「僕」と叔母の恋。やがてライターの精神は変調を来し、虚実は混淆する……ノーベル文学賞作家の半自伝的スラップスティック青春コメディ」は、真に受けていい。とにかく楽しんだ。2023/12/09
Shun
32
初めて読んだリョサの作品「街と犬たち」の印象とは大きく異なり、半自伝的青春小説と言える内容で概ね軽妙で愉快な物語であり、そこにはユーモアと些細な悲劇に振り回される若者の青春の日々が描かれる。主人公は小説家を目指す青年で学業の傍らラジオ局でささやかな文筆の仕事に就いている。ある時個性的な天才シナリオライターと知己を得て、そしてプライベートでは美しい叔母フリアに熱を上げ、日々は賑やかに過ぎてゆく。「僕」の日常場面も面白いが、同時に描かれるシナリオの部分も十分に面白くて文字通り読み応えのある大長編でした。2023/09/15
塩崎ツトム
18
32歳でバツイチだけどキュートなヒロインのフリアおばさんが良い。そして創作に人生を全振りして心身ともに燃え尽きていくシナリオライター。人生は躁鬱的な振り子と、情熱と後悔の反復横跳びなの……か?2023/10/20
taku
15
最初のうちはエキセントリックな挿話が本筋より濃い味で印象的。そのうち本筋ならではの味もしっかり広がる。サンドイッチはパンがおいしくないとね。リョサにしてはポップでも、濃密な文体と一筋縄でいかない構造で期待を外さない。小説を習作する分身と、才気あるシナリオライターの存在。評価や2人の結末に書くことの思想が反映されているとは思った。若いマリオちゃんのくすぐったくて突っ走る恋愛、大人は過去を懐かしむことができるね。ハビエルにもモデルがいるのだろうか。恋愛鉄メンタルの申し分ない親友だ。2024/11/17
Satoshi
11
主人公と伯母の恋愛とラジオドラマが交互に語られる。ラジオドラマのシナリオライターは徐々に狂っていき、ストーリーが破綻していく。主人公の恋愛劇は青臭い展開で、安っぽいソープオペラの様である。しかしながら、破綻しきっているラジオドラマは下ネタ満載であり、無意味に人が死に、スラップスティックコメディの様相である。この破綻したナンセンスな展開を読んでいたら、娘が好んで視聴していた「おそ松さん」を思い出してしまった。2025/01/18