内容説明
「生きることは戦争だった。そしてその戦争で、僕らは毎日、負けつづけた。」家屋が密集するスラムに暮らす「こびと」一家を、急速な都市開発の波が襲う。国家という暴力装置と戦う、蹴散らされた者たちのリリシズム。独裁体制下の過酷な時代に書かれ、その後韓国で三百刷を超えるロングセラーとなり、世代を超えて読み継がれる不朽の名作。
著者等紹介
チョセヒ[チョセヒ]
1942年、韓国・京畿道加平郡生まれ。ソラボル芸術大学(現・中央大学校)文芸創作科、慶煕大学国文科に学ぶ。65年、「京郷新聞」新春文芸欄に「帆柱のない葬船」が当選して作家デビュー。その後10年間の沈黙を経て、75年より「こびと」連作を発表し始める。78年、『こびとが打ち上げた小さなボール』を刊行。79年、同作で東仁文学賞受賞。2022年に逝去
斎藤真理子[サイトウマリコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
60
昨夜半近くに読了。なんとも云えないエネルギーが熱く、時に静かにマグマのようにゆっくり、しかし圧倒的なパワーで大地を焦がしていく。感想など、書けそうにない。年の最後に本作を読めて良かった。2024/12/31
ベル@bell-zou
33
"父さんの体が小さかったからといって、命の量まで少なかったわけがない。父さんは死ぬことによって、自分の体より大きかった苦痛から抜け出した。"。月の天文台で仕事をするいう大きな夢もその苦痛を和らげられなかった。他の誰かの嘆きや哀しみ、怒り。それらを踏み台にしながら無自覚でいるのは悪ではないが罪なのではないか。もしかしたら私自身も。ずっと読んでみたかった本。半世紀前とはいえ隣国のことと思えないほどの貧困と絶望的な格差が重苦しい。対して望みを託すような軽やかなタイトル。まさに"クラインのびん"。2023/07/17
ホシ
24
70年代の韓国。”こびと”は様々な仕事を渡り歩きながら「幸福洞(ヘンボクドン)」にあるスラム街に妻と3人の子供たちで暮らしていたが土地開発のために立ち退きを迫られることに。不遇の人生を甘受する”こびと”。そんな”こびと”を父に持つ長男のヨンスや”こびと”の家に入り浸っていたチソプは社会への抵抗をやめなかった。▽連作短編であることに加え、70年代の韓国の事情を知っていないと理解が難しいです。この国に滞在して長くなりますが、ちょっと分かりづらかった。まずは解説から読むことをおすすめします。2023/09/23
練りようかん
15
1970年代の都市開発を土台にした連作。経済的拷問、出ない水道と付け替えた蛇口、前2作は祖先から引き継いだ世代と将来の伸びしろを感じる若い世代があって、不条理に満ち満ちているけれど僅かな希望があるのではと思った。しかし抜け出せない展開でショッキングな言葉が飛び交う表題作に没入、読み進めるうちに教育格差が気になった。中学校が義務教育になったのは1984年。日本は大学や就職のため学歴競争するが韓国は人生のためなのかなと感じた。締め出されないための習熟。数学教師の教えがまさにメビウスの輪で、読後感を深めた。2025/03/09
やいっち
12
昨夜半近くに読了。なんとも云えないエネルギーが熱く、時に静かにマグマのようにゆっくり、しかし圧倒的なパワーで大地を焦がしていく。感想など、書けそうにない。年の最後に本作を読めて良かった。2024/12/31