出版社内容情報
チェスに魅了された少年はたちまち世界的プレイヤーとなる。優しい恋人と孤独な内面。著者の「最初の傑作」にして最高のチェス小説。
内容説明
どこか特別な少年ルージンは、チェスの神童として注目される。家族と離れ、世界で対局を続けるうちに、芸術家として彼を敬愛する女性と出会う。ベルリンの大会を絶好調で過ごす彼は、手強いイタリア人トゥラーティとの対決を迎える。
著者等紹介
ナボコフ,ウラジーミル[ナボコフ,ウラジーミル] [Nabokov,Vladimir]
1899年ペテルブルグ生まれ。20世紀の世界文学を代表する作家の一人。ロシア革命によりベルリンに亡命後、1940年アメリカに移住。大学で教える傍ら、英語で執筆を始める。77年没
若島正[ワカシマタダシ]
1952年京都生まれ。京都大学名誉教授。アメリカ文学研究・翻訳・詰将棋作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
55
傑作! ナボコフファンのはずなのに、今ごろ本作に気が付いた自分の不明を恥じる。2024/08/20
優希
52
チェスを題材にした作品でした。チェスのルールを知らないのが悔しかったです。それでもナボコフが連鎖する企みにはまんまとハマってしまうんですよね。面白かったです。チェスを知らなくても楽しめたので、ルールを知っていたらもっと楽しかったでしょう。良著です。2023/04/29
星落秋風五丈原
18
マルレーン・ゴリス監督の『エチュード』を見てから読了。2022/09/13
まぶぜたろう
17
ポケットから出てくるハンカチやチェス盤、煙草や硬貨、星形に裂ける窓や夜空、枡目、格子模様、家に帰ること、様々な言葉がこれしかない正確さで配置され、時空を超えて連携する。そしてナボコフの描く女性たち。悪女だろうが、年上の叔母や人妻や、本作のような献身的なフィアンセ=妻であろうが実に魅力的で、通俗的な読みを拒絶しながら、彼女たちの姿はひたすらに抒情的で美しい。「どこにも行かないでいいのよ」と声がして、ピンクのドレスがたちまち虚空を満たした」。私はこの名無しの妻にジューン・アリソンをキャスティングしたのだった。2023/04/26
taku
14
まえがきで示唆しているとおり、主人公と神である作者の対局が物語の原動力。ナボコフのチェス・プロブレムと言えるのだろう。なんとも巧妙だ。終盤は一手ずつ冷酷に追い詰めているが、神は力を誇示しているのではない。愛(執着)ゆえに苦しみ翻弄される人への慈しみが隠れ、そこが温かさに満ち溢れた作品とナボコフが評するところ。あるいは私が簡単に誘導され過ぎか。10章最後、母親の言葉がずっと気になっていた。愛ではなく情なのだな。2024/08/01