出版社内容情報
ヴィクの奔放な妻メリンダは次々と愛人と関係を持つ。その一人が殺害されたとき、ヴィクは自分が殺したとデマを流し……映画化原作。
内容説明
郊外で出版業を営む資産家ヴィクの妻メリンダは美しく奔放で、次々に愛人と関係を持つ。偶然その一人が殺害されたとき、ヴィクは今の愛人を脅すために、自分が殺したと吹聴するや、町じゅうの噂になる。またもや妻が新たな愛人をつくると、ヴィクはその男をプールの底に沈めてしまう…巨匠ハイスミスの傑作長編、改訳版。
著者等紹介
ハイスミス,パトリシア[ハイスミス,パトリシア] [Highsmith,Patricia]
1921年、テキサス州生まれ。45年に「ヒロイン」が雑誌掲載され作家デビュー。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。サスペンスの巨匠として多くの作品を発表。生涯の大半をヨーロッパで過ごした。95年、逝去
柿沼瑛子[カキヌマエイコ]
1953年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
19
主人公ヴィクの心情が恐ろしく綿密にしつこく書かれるミニマリズムサスペンス。心情というか他人や妻がどう思うかについてくどくど言ってるので、ヴィクの人となりがわからなくなって混乱する。そして妻メリンダのモラルや常識が全く無い様に、読む自分の善悪の中心軸がわからなくなって、一体誰が悪い話なのだろうと居心地の悪い読書だった。出てくる人物も薄気味悪い人たちが多く、そうで無い善人は話の筋と殆ど関係がなく、作者の作り出す世界に翻弄される私。ハイスミスめー2022/05/29
bapaksejahtera
12
ハイスミス読書二作目。小さな町で前の代から受継いだ資産を有し、採算度外視の出版業を趣味的に行う男は、妻と娘のいる36歳。穏やかな性格で周囲からの受けも良いこの男の妻は、子供が生まれて以降浮気を繰返す。この奸婦堕婦は情夫を家に連れ込むようになり、夫婦関係は緊張を孕むように。男は妻を嫌悪と共にある種の愛着を以て捉えるが、不満は間男の程度の低さである。或日男は妻の愛人に対し、以前の愛人が死んだのは自分が殺したと脅しをかけ、周囲にその噂を広める。間男は撃退したものの嘘から出た真は、次第に小説をノワールの世界に導く2023/12/07
29square
12
凄い。。普通の人間の一歩踏み外したところにある地獄。ハイスミスの作品人物はいつもリアルでステレオタイプ感が無いのだが今作はその極致というか、もう主人公夫婦の普通の会話だけでライブ感があるから凍えるような恐怖。映画化したらしいけど、主人公の底知れない人間性をどう演じているのか…。2023/07/02
田中峰和
6
性悪で身持ちの悪い妻に翻弄されるヴィク。妻は次々新たな愛人を連れくる。愛人の一人が殺害されていたので、あのようになりたくなければ逃げだした方がいいと脅して、何人かはそれで退散させたが、逃げない奴もいる。ついに一人の愛人をプールで溺死させたが、妻はヴィクを犯人と詰る。こりない女で、今度は探偵を雇って、その男とも浮気する。体力に自信のないヴィクだが、大男の探偵も殺害してしまう。リプリーシリーズでもそうだが、殺人に至るハードルが低いのがハイスミスの特徴。残念ながら、最後は逮捕されるが妻を殺せてよかった。2024/11/21
killeerqueen3
5
次々と愛人を作る妻メリンダとプライドが異常に高く、決して嫉妬心を見せない夫ヴィク。二人の関係が破滅的で全く理解できなかったけど、ヴィクがメリンダの愛人を本当に殺してしまってからの展開が気になり、読ませる筆致はさすが。ヴィクが一線を超えて破滅に向かって進んでいくその心理描写の変化も見事だった。訳者あとがきによれば、ハイスミスの実際の恋愛がモデルになっているらしく、そういった意味でも興味深く読んだ。ベン・アフレックとアナ・デ・アルマスの映画が配信始まったのでそちらも観ようと思う。あと、この邦題も上手い。2022/04/02