出版社内容情報
脳が地面に転がり落ちるたびに熱狂的な演説で民衆を煽る独裁者フィル。国民が6人しかいない小国をめぐる奇想天外、爆笑必至の物語。
内容説明
国民が一度に一人しか住めない極小の“内ホーナー国”と、巨大な“外ホーナー国”。ある日国境に現れたフィルは、脳がラックからはずれるたびに熱狂的な演説で民衆を魅了し、独裁者にのしあがっていく。税金の徴収、突発する武力衝突、侵略者の処刑…。飛び抜けた想像力で目に見えない現実を描きだすアメリカ文学の鬼才による、抱腹絶倒で背筋の寒くなる「おとぎ話」。
著者等紹介
ソーンダーズ,ジョージ[ソーンダーズ,ジョージ] [Saunders,George]
1958年生まれ。卓越した想像力を駆使する現代アメリカを代表する作家。2017年、長篇『リンカーンとさまよえる霊魂たち』でブッカー賞受賞
岸本佐知子[キシモトサチコ]
翻訳家。『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
116
テレビでおすすめの本にあがっていたのを見て購入。読みやすい長さでありSF好きにもおすすめできるし海外文学好きにもおすすめできる。要するに誰にでもおすすめできる本!内容はディストピアに分類される。内ホーナー国と外ホーナー国のお話。内ホーナー国はとても小さな国。その周りを囲んでいるのが外ホーナー国。今までは特に争いもなかった。しかし内ホーナー国が縮小してしまい体が外ホーナー国に出てしまった。そこから少しずつ話が動き出す。荒れた世の中で輝くフィル。その姿はまさにジョージ・オーウェルが描く動物農場であった!2022/03/30
Shun
35
訳者も触れているようにオーウェルの「動物農場」のような寓話的な風刺作品と説明するのが適当だろう。ですが本作はそういった文学的な意味を考えず読んでもきっと面白いお伽話です。例えば動物農場だと人間の代わりに農場で囲われているような動物しか出てこないのでとても想像しやすいが、本作は完全に未知の生物が主役で舞台となる国々はこれまたあり得ない形なのです。(極小の国土や狭小な形の国)そこへフィルという男の登場。彼は脳がラックから外れる度に熱狂的演説をかまし独裁者の道を進むのだが・・・。そして末路はまあそうなるよね。2022/01/02
そふぃあ
31
一度に一人しか入れないほど小さな国や、人物造形で「ベルトのバックルに青い点を一つくっ付けてツナ缶の空き缶に接着したような感じ」とか、スライド・ラックに固定されている脳とか、こんな奇妙で面白い描写は初めて見た。理不尽に略奪や処刑が行われるが、こういう出来事が実際にあって、今も起きていることが恐ろしい。「短いセンテンスでわかりやすい正義」を語り、「敵をモノに貶めておいてから大手を振って抹殺しようとする」のは現代のテロリズムでも常套手段。どうか混沌を混沌のまま見つめる眼を多くの人が持てればいいと思う。2021/08/11
kieth文
29
フィルの野心は無知で短絡的なのにプライドばかり高い。改めて空恐ろしくなった。 内ホーナー人の方が知的レベルは高く、それに外ホーナー人は以前から嫌な感情を持っていた(特にフィルは) フィルの独裁が激化して、弾圧は目を覆いたくなるほどだった。 そして大統領の取り巻きやマスコミの連中の太鼓持ちぶりが、、、こんなものなのだろうか⁈ ある程度の地位についていると、上に迎合していくことで自分の保身が一番になってしまうものなのかもしれない。 この物語を現実世界に当てはめる事は難しい。けれどそう解釈する人もいるだろう。2024/01/19
ロア
28
童話だと思ってほんわか読み始めたら全然違った!( ゚Д゚)フィルと仲間達による非道と残虐に第5チャクラ痛発症しつつも、タイトルにある「短くて」という言葉に励まされながら何とか読了。キャルやフリーダが解体される場面は悔しさと怒りがこみ上げ、マスコミの三人の小男たちがメガホンで叫ぶプロパガンダには戦慄した。ラストでリオーナが「短いセンテンスで分かり易い正義」を語る人々に支配される世界を夢想する姿は、いつの日かまたフィルのような独裁者が現れる事を予感させ、ぞっとした。翻訳者は信頼の岸本佐知子さん!(*´ω`*)2021/10/30