出版社内容情報
奇妙な風習のある村、死霊に憑かれた僧侶、ミイラを作る女達……。フランスを代表する作家たちの、怪奇とスリルに満ちた傑作怪談集。
内容説明
奇妙な風習を持つ村、不気味なヴィーナス像、砂漠で出会ったミイラをつくる女たち、魔法のかかった手が導く悲劇…。ネルヴァル「魔法の手」、アナトール・フランス「聖母の保証」、マンディアルグ「死の劇場」など、フランスを代表する作家たちがおくる恐怖と幻惑の十二編。サスペンスに満ちた、珠玉の怪談アンソロジー。
著者等紹介
日影丈吉[ヒカゲジョウキチ]
1908年、東京生まれ。作家。アテネ・フランセ卒。フランス語教師、フランス料理の研究指導を経て、戦後、推理小説を執筆。『宝石』誌の懸賞に入選した『かむなぎうた』でデビュー。『狐の鶏』で日本探偵作家クラブ賞、『泥汽車』で泉鏡花文学賞受賞。1991年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
34
66歳になった司祭が今でも活き活きと恋バナするのがいかにもおフランスな『死霊の恋La morte amoureuse』(ゴーチェ/著田辺貞之助/訳)。生まれた時から神に仕えることだけを考えてきた純粋培養の男性ロミュオーは、一目見た時からクラリモンドという女性の事が忘れられなくなる。彼女は「もしあなたが私のものになるなら神様よりも幸せにしてあげましょう」と甘言を弄して誘惑にかかる。一方師のセラピオンは堕落に向かう弟子を必死で引き留めようとする。若者VS女性VS師の対決が日本の怪談の「牡丹燈籠」のようだ。2020/11/01
みや
26
フランスを代表する12人の作家のホラー短編アンソロジー。フランスには幽霊の文化がないらしく、「怪談」という題名ながらも魔術師や吸血鬼、ミイラ、異質な人など、怪異とは違うタイプの作品が集まり、異国性を感じられて楽しかった。女性は円形の広場で死ななければならない村で、一人の老女の死をみんなで見物する『死の劇場』が大好き。男たちが無邪気に盛り上がる様子も、女が次第に息絶えていく姿も不気味でワクワクした。地中から掘り出されたヴィーナス像が惨劇を生む『イールのヴィーナス』と哀愁漂う結末の『壁を抜ける男』も良き。2022/08/01
つらだ
6
フランス作家陣によるホラー短編集。読みづらく感じるものもあったが、なんとか読了。個人的には地中から掘り出したヴィーナス像によって齎される恐怖を描いた「イールのヴィーナス」が印象的だった。「本人の意図しない行動が結果的に悲劇を招いてしまう」という古典的な怪談パターンを踏襲しているのも良い。今回アルフォンス青年を絞め殺したヴィーナス像だが、彼女からしたら「そっちから求婚してきたのに他の女と重婚して寝るなんてどういうつもり?」といった気持ちだったのかも。女神の嫉妬を買うような、思わせぶりな行動は控えた方が良い。2023/12/25
Kotaro Nagai
5
本日読了。河出の世界各国怪談集7冊目。メリメ、ドールヴィイなど1830年代から1962年までの作品12編を収録。ゴーティエ「死霊の恋」はフランス版「牡丹灯籠」のようなストーリーで楽しめた。メリメ「イールのヴィーナス」も面白かった。フランスという国柄か英国のような怖い作品はなかったです。2020/06/13
山田
4
まどろっこしい…。じっくり読んで、少し考えてみると、内容的には大したことの無い話が多い。身分の高い方の名前から始まりその身分の説明や、その時代の風習や思想・宗教的な思惑の説明が随所に長々とある。ストーリーにはほとんど関係がない。これは、中国怪談集にも通じる。起承転結に関係ない説明文の方が多い。怪談から怖さを剥ぎ取ってる感じがする。2020/07/11