出版社内容情報
ある日突然失明する原因不明の「白い病」。一人視力の残る女性の視点で語られる悪の連鎖。ノーベル賞作家の究極のディストピア小説。
内容説明
「いいえ、先生、わたしは眼鏡もかけたことがないのです」。突然の失明が巻き起こす未曾有の事態。運転中の男から、車泥棒、篤実な目医者、美しき娼婦へと、「ミルク色の海」が感染していく。善意と悪意の狭間で人間の価値が試される。ノーベル賞作家が、「真に恐ろしい暴力的な状況」に挑み、世界を震撼させた傑作長篇。
著者等紹介
サラマーゴ,ジョゼ[サラマーゴ,ジョゼ] [Saramago,Jos´e]
1922年ポルトガル生まれ。現代ヨーロッパを代表する作家。95年『白の闇』を発表し、カモンイス賞受賞。98年ノーベル文学賞受賞。2010年没
雨沢泰[アメザワヤスシ]
1953年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
147
不思議な物語だった。突然目の前が真っ白くなって目が見えなくなった男、車を運転してあげ、その車を盗んだ男も視界が真っ白になり眼科医も病院の医師も…と失明(?)者が続々現れ、患者は精神病院に隔離されるが、さらに人数が増えて病院がパンクする。トイレが飽和し、部屋中、庭中糞尿で溢れかえる。患者たちへの食料を悪漢たちが独占し、女性患者たちの性的奉仕により分け与える…と、町中が、国中が悲惨な状況になる…。まあ、よくもこのような突拍子もない状況を思いついたものだ。まさにドンキホーテ的発想の作品である。G1000。2024/01/07
ちびbookworm
126
★3.5-4.「『ペスト』より面白い」は本当。だが食傷気味◆「白い闇」の本当の恐怖は、失明ではない。都市的機能の崩壊、理性の失墜により、真に暴力的な状況に陥ること◆かつて、新渡戸稲造が「人は、神と獣の間に立つ」と指摘したのは、至言◆一旦、戦争や感染症等で「都市的生活」が崩壊すると、人は、あっさり獣へ失墜する。薄皮一枚下の、半獣性をいかに従え、〈人らしい存在〉たらんとするか◆自省だけでは救い難い。上下水道、スーパー、病院、憲法、芸術等、〈人らしく留める、社会/政治/文明的仕掛け〉の大事さを身にしみて実感した2022/04/16
おたま
99
これはなかなか哲学的に奥深い、それだけに一筋縄ではいかない、多様な読みを可能とする小説だと思う。視野が真っ白になるという感染症が次第に蔓延し、社会がその感染症に覆われたときに何が起こってくるのか、その思考実験の書。作者のジョゼ・サラマーゴ自身が「われわれは、実際みんな盲目じゃないか」と言っているように、私たち皆が、現実を見ているようで、実は現実を本当には見ていないのではないか。つまり曇りなく理解してはいないのではないか。そして、相互不信の中で暴力的な世界は生まれているのだということ。そんなふうに読めた。2020/04/12
fwhd8325
91
導入が面白く、そのまま物語に入り込めるかと思いましたが、なかなかそうもいかず、長いセンテンスに苦戦しました。この作品は、コロナが流行し始めた頃に知りました。実際、ここで描かれているような状況を経験する可能性はかなりの確率であるのかなと思います。災害の時も同じようですが、やはり人間が一番怖い2020/09/18
やいっち
80
16日(火)に読了。敢えてというわけではないが、一週間を費やした。叙述自体は手慣れたもので読みやすいのだが、内容的にかなり尾籠な記述があって、日に数十頁もしんどかったのである。2023/05/16
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