出版社内容情報
ホーソーン、ラヴクラフト、ルイス、ポオなど、開拓と都市の暗黒からうまれたアメリカ文学の粋を集めた究極の怪異譚集、待望の復刊。
内容説明
「新天地」である北米にはヨーロッパやアジアにはない怪異と恐怖が渦巻いていた。荒俣宏が「アメリカ文化の底を流れる怪異」の本質をあきらかにすべく精選したホーソーン、ポオ、ラヴクラフト、ビアス、ブラッドベリなどの十三の物語による究極のアンソロジー。開拓時代の名残をとどめる奇譚、都市における精神の崩壊譚など多彩な作品群がアメリカの暗部をあきらかにする。
著者等紹介
荒俣宏[アラマタヒロシ]
1947年東京に生まれる。慶應大学法学部卒業。小説家、エッセイスト、博物学者、翻訳家などとして多彩な活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
66
米国の幻想・怪異小説を集めた本。ラヴクラフト、ポオ、ブラッドベリと錚々たる顔ぶれが並びます。内容も、ピルグリム・ファーザーズから続くピューリタニズムの影の部分を暗示するようなホーソーンから、西インド諸島のヴードゥ教やインディアンの説話を絡めた作品や近代人の精神的葛藤を扱ったものなどまで多彩で、米国の多様さ多面さが窺われるよう。ホーソーン、ビアスのほか、老婆の記憶の中に迷い込む幻想性が素晴らしいヘクトの『死の半途に』、インディアンの説話に材をとったルイスの『大鴉の死んだ話』、ウォートンの『邪眼』が大変好き。2022/10/27
HANA
63
怪談アンソロジー。このシリーズらしく有名どころはポオ、ラヴクラフトからあまり聞かない作家、アメリカ創設期に纏わる怪談から民話調、都市の怪談にサイコホラーと内容はバラエティに富んでいる。ラヴクラフトはやはり盛り上げたところでの怪異の正体明かすのが上手いのと、ポオの諧謔味、これは別格として他にも読み応えあるものが多い。個人的には先に読んだB・ヘクト「死の半途に」が割と王道の作品だったのと、ホーソンの「牧師の黒いヴェール」の薄気味悪さが印象的かな。どの作品の背後にも横たわるアメリカを堪能できる一冊であった。2021/06/05
kasim
31
文学史上の王道から知らない作家まで。荒俣氏お薦めはポオもホーソンもブラッドベリもえっ、これ?という感じで面白いセンスだった。ちなみにポオは「悪魔に首を賭けるな」。収穫はウォートン「邪眼」。堅実な老人が若き日の体験を語る話に見せて、安全な語りの現在が突如脅かされる結末の怖ろしさ。悪魔は自分だったのか? 同じく、広がりを感じさせつつ説明しつくさないビアス「ハルピン・フレーザーの死」も怪作。死から甦った家族はゾンビ(というか伝統的吸血鬼)と同じく絶対他者だが、生前の母子のいびつな関係も透けて見える。2023/12/14
そふぃあ
24
好みだったのはホーソーン「牧師の黒いヴェール」、ラヴクラフト「忌まれた家」、ブラッドベリ「ほほえむ人びと」、ケラー「月を描く人」。 収録作品が、<ヨーロッパ的怪奇→アメリカ的都市文明→人々の精神崩壊>というステップを踏んでいるらしく、終盤になるにつれて怖かった。最も恐ろしいのは人間の心だ。ブラッドベリがいちばん怖かった。特に好きなのはホーソーンとケラーの作品。前者は黒いヴェールを付けている理由が最後まで判然としなかったのが、後者は吸血鬼の実体のなさが背筋をぞくりとさせた。2020/08/28
あたびー
24
#日本怪奇幻想読者クラブ 読んだのは1989年の初版。初読からかなり時間が経っていて、覚えのないものも多かったので楽しめた。最近ふとキングの作品に良く先住民の忌地が登場することに気づいたのだが(ペットセメタリー、シャイニング他)巻末荒俣先生の解説にアメリカには欧州から妖精は移り来ず先住民やアフリカからの怪奇が多いと言う事が書いてあったので頷けた。ただしゲイマン「アメリカン・ゴッズ」には、アイルランドから移住してきた女性がアメリカで妖精を語り伝える話が挿入されていて、その様な例もきっとあったことと思う。2019/12/09