出版社内容情報
「物語の精髄は本書の小品のうちにある」(ボルヘス)。古今東西の書物から編纂された世にも不思議な話の数々。解説=朝吹真理子。
ホルヘ・ルイス・ボルヘス[ボルヘス,J L]
著・文・その他
柳瀬 尚紀[ヤナセ ナオキ]
翻訳
アドルフォ・ビオイ=カサーレス[ビオイカサーレスA]
著・文・その他
内容説明
死の宣告、魔法による創造、死者と生者の邂逅、予測しえない悲劇、夢の中の処刑、王の約束、不滅の種族…古代ローマ、中国、インドの故事や、千夜一夜物語、カフカ、ポオなど、古今東西の書物から選びぬかれた92の短くて途方もない話。
著者等紹介
ボルヘス,ホルヘ・ルイス[ボルヘス,ホルヘルイス] [Borges,Jorge Luis]
1899‐1986年。20世紀を代表する詩人・小説家。アルゼンチン生まれ。幼少から古今東西の書物に親しむ
ビオイ=カサーレス,アドルフォ[ビオイカサーレス,アドルフォ] [Bioy Casares,Adolfo]
1914‐1999年。小説家。アルゼンチン生まれ。ボルヘスとの共作・共編多数
柳瀬尚紀[ヤナセナオキ]
1943年根室市生まれ。英文学者・翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムッネニーク
116
71冊目『ボルヘス怪奇譚集』(J・L・ボルヘス/A・ビオイ=カサーレス 著、柳瀬尚紀 訳、2018年4月、河出書房新社) オリジナルは1967年刊行。「図書館に住まう書淫の怪物」ことボルヘスとその親友カサーレスが、古今東西あらゆる怪奇譚を蒐集し、それを編纂した一冊。それぞれの物語はかなり著者たちが手を加えており、中にはさも出典があるかのように装いながら彼らが変名で書いたものもある。数ページ程の短い物語ばかりだが、文章はかなり読みづらい。 「物語の精髄は本書の小品のうちにある、とわれわれは自負する」2023/07/21
青蓮
113
物語の精髄は本書の小品のうちにあるーー古代ローマ、インドの故事、中国の故事や千夜一夜物語からカフカ、ポオなどの古今東西の書物から選び抜かれた92の短くて途方ない話を集めた作品集。それぞれがとても短いので、さらっと読めてしまう部分もあるけれど、短い故に言葉が持つ深い意味、鋭く突き刺さるような物語の余韻があります。この作品集の中にはボルヘスかカサーレスの創作である作品がしれっと混じっていると言う遊び心も楽しい。そしてまた古来より人々が創り出し紡いで受け継がれた沢山の物語の血脈にロマンを感じます。素晴らしい本。2018/05/21
藤月はな(灯れ松明の火)
111
知の巨匠、ボルヘスがカサーレスと編纂した世界中の不思議で奇妙な物語の断片たち。一度、読んだだけじゃ、分からない。でも何度も読んで「分かった!」、「でも何か違うような・・・・」と噛み締めたくなるような馥郁さと芳醇さと奥深さがある。そして「荘子」など、知っている話でもそれがどこの国の人が語り直したのかで違うようにも見えるのも不思議だ。2018/09/07
あも
87
図書館に勤めていた時代のボルヘスが、古今東西の奇譚を蒐集した短編集。ギリシャ神話、千夜一夜物語、胡蝶の夢に代表される老荘の挿話。O・ヘンリーやカフカ、果ては葛飾北斎のエピソードまで。長くて3頁程度、短ければ1行のものさえある。時代も国もバラバラの不思議で幻想的な物語たち。意味不明な話もあるが、深く考えずに雰囲気に浸るのも心地良い。何より嬉しいのは、人間とは、かくも物語を欲する生き物だということ。語り継がれてきたもの、零れ落ちてしまったもの。広大な砂浜で、そんな物語の欠片を拾い集める宝探しの情景を想起した。2018/12/12
sin
83
怪奇譚?いや奇譚集であろう。「物語の精髄は本書の小品のうちにある」と自負されるだけあって、余分な肉を削ぎ落とされたそれぞれの文章は、その短いセンテンスに数多ある物語の根幹を彷彿とさせる。謂わば物語が形造られる前の原石が納められた一冊である。2018/08/26