出版社内容情報
精霊たちが飛び交う、大いなる愛と暴力に満ちた神話的世界を描きマルケス『百年の孤独』と並び称されるラテンアメリカ文学の傑作。
内容説明
クラーラは、不思議な予知能力をもっていた。ある日、緑の髪をたなびかせ人魚のように美しい姉のローサが毒殺され、その屍が密かに解剖されるのを目の当たりにし、以来九年間口を閉ざしてしまう―発表されるやまたたくまに世界的評価を得た、幻想と現実を自在に行き交う桁外れの物語。ガルシア=マルケス『百年の孤独』と並ぶ、ラテンアメリカ文学の傑作。
著者等紹介
アジェンデ,イサベル[アジェンデ,イサベル] [Allende,Isabel]
1942年、ペルー生まれ。3歳のとき両親が結婚を解消、母とともにチリの祖父母の家で暮らす。高校卒業後、国連機関に勤めたのち、雑誌やテレビでジャーナリストとして活躍。62年に結婚、翌年長女パウラが生まれる。73年、叔父にあたるサルバドール・アジェンデ大統領が軍事クーデタで暗殺され、自身も職を追われるなどの弾圧を受けたためベネズエラへ移住。そこで執筆した『精霊たちの家』が、スペイン語圏をはじめ、アメリカ、ヨーロッパ諸国で絶大な反響をよぶ
木村榮一[キムラエイイチ]
1943年、大阪市生まれ。神戸市外国語大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
84
血の濃さと、気性心理霊感、映像風習事件等々、森羅万象を生き生きと描くその凄みを感じる作品。一人一人の内に過剰と欠落が同居し、日常の悲喜こもごもと精霊と夢想が同居する。ふと気づけば親戚の子みたいに精霊がいる。例えば叔父が話す数奇な話の数々はどれも短編になりそうなのにわずか半頁、例えば蟻の大群の不可思議な感応の顛末がある。自らの生から死への遷移を見届ける老人がいれば、意想外の死があり、心凍る亡霊となっての死もある。力づくでは奪えないはずの世界にも暴力は押し入ってくる。これはまだ上巻。不吉な予言に満ちた下巻へ。2019/06/30
えりか
49
面白い。緑の美しい髪を持つ絶世の美女であるローラ、透視能力があり、精霊と通じ会えるクラーラ、クラーラの夫であり独裁的な農場主のエステーバン、そして二人の子供のブランカ。変わりゆく国の激動の中で、繁栄と衰退、希望と絶望を体験していく一族の話。彼ら一族は社会主義の広まりと共に思いもよらぬ運命に導かれ、悲恋や絶望的な孤独を体験することになる。彼らの運命は、そして国の未来はいかに。下巻へ。個人的には、声をださなくなったクラーラをおばけに変装したりと、あの手この手でびっくさせて直そうとした乳母が可愛らしくて好き。 2017/07/14
そふぃあ
30
遂に文庫化したので今更ながら読んだのだけど、すごく、すっごく、面白い!!ラテンアメリカといえばGマルケスとかMVリョサとかボルヘスなんかの固めのオジサンの文学がメインストリームなのだけど、本作は文章が洗練されていて(もちろん木村榮一さんの訳も非常に良いのだろうが)、文学を嗜む知識階級だけでなく大衆にも受け入れられるところや、恋愛描写の巧みさなんかが女性作家らしく、南米には新しい風だっだろうと思う。個人的には、大学の恩師が学生に、しきりに女性作家を研究対象として勧めていたことに納得した。2017/07/31
コジ
25
まだ婦人参政権も無い混沌とした時代の南米を舞台に三世代の女性たちを中心に数奇な運命を辿る一族を描いた重厚な人間ドラマ。商才に長けながら横暴で変わりゆく時代の流れに付いて行けず孤立していく傲慢な夫。神秘的な力を持ち、周囲の出来事に無関心なのかと思えば意外と逞しく、社会の変化にも適用していく妻。そして新しい時代を背負った子供たち…。人間模様もさることながら、様々なエピソードや時代背景など注目に値する事柄が大量にあり、ボリュームは圧倒的。それにもめげず物語にのめり込む。新しい時代の幕開けに期待しつつ下巻へ。2017/08/25
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21
50年前にクラーラが記したノートが物語のはじまり。精霊の血を宿すクラーラと娘、孫たちのサーガ。物語はまだ男たちの物語。イリュージョンからリアリズムへの分岐は、時代の流れとリンクして新たな息吹を予感させる。張り巡らされた不穏な予感が物語をどう導くのか。物語に引き込まれたまま、下巻へ。2020/11/16