出版社内容情報
タラウマラ族と出会ったアルトーがその衝撃を刻印したテクスト群を集成、「器官なき身体」への覚醒をよびさます奇跡の書。
内容説明
「私は世界の最終地点の一つにたどり着いていた」―メキシコのタラウマラ族との出会い、そのペヨトル/ダンスの儀式はアルトーに決定的な啓示をあたえ、「器官なき身体」への道を開いた。巨大な岩石からなる地理とシャーマニズム的儀式をみずからの身体に打刻する苛烈な実験の衝撃をしるし、世界への新たな闘いを告げる特異なテクスト群を集成したアルトーの奇蹟の書。
目次
タラウマラ族におけるペヨトルの儀式
タラウマラの国への旅について
トゥトゥグリ
『エル・ナシオナル』に掲載されたタラウマラ族に関する三つのテクスト
『ヴヮラ』に掲載されたテクスト
『タラウマラに国への旅』の補遺
ペヨトルに関する一注釈
タラウマラ族に関する手紙
著者等紹介
アルトー,アントナン[アルトー,アントナン] [Artaud,Antonin]
1896‐1948。「思考の不可能性」を思考するフランスの詩人。「残酷劇」を提唱する演劇人。西洋からの脱却を試みて、後年、精神病院に監禁される
宇野邦一[ウノクニイチ]
1948年生まれ。『アルトー後期集成』(全3巻)を鈴木創士とともに監修(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
22
連れ合いが借りてきたのを先読み。へえ!こんな怪しげな詩人さんいたんですねえ、と言ったら「すごく有名な人だよ!」と憤慨されました。へいへいすんませんねえ。しかし文学界のポール・ゴーギャンというかなんというか・・・自分探しのやりすぎで精神病院に入れられちゃったヒッピーの魁というか・・・という私の感想に連れ合いキレ気味でした。ちなみにこの詩人の骨格と思いつめた目つきが彼そっくり。骨相学って当たらずとも遠からず。2017/09/15
∃.狂茶党
15
メキシコの先住民の儀礼に参加しておいて、アルトーの体験は、キリスト教をめぐって語られる。 欧米の文献を読んでいて、文法の違いによる強調のずれとかとともに気になるのが、至る所に顔を出す、キリスト教という前提だ。 実際アルトーはキリスト教の神、神との関係に、生涯関心を示していたように思う。 反キリストや、棄教は、キリストを信じる者にだけ可能なことだ。 布教は行われたに違いない。 が、祖先から受け継いだ儀礼で、キリスト教ばかり見てしまうアルトーは、やっぱちょっとおかしいのではないか。 2023/08/25
どらがあんこ
10
円環と越えられるものとしての十字架のイメージが印象的であった。破裂音のようなテクストである。2019/01/05
嫁宮 悠
4
メキシコのインディアン・タラウマラ族をめぐるテクスト群。詩人ならではの感性と、タラウマラの神秘的な信仰がモザイクを形成し、「神」とも「一原理」ともつかぬ一つの表象が浮かび上がる。どこまでが素で、どこまでが演技かわからない点は、やはり演劇人。 自己演出と狂気が入り混じった、独特の味わいをもつが、基本的に難解かつ混沌としている。ジャン・ポーランへ宛てられた、掲載催促の書簡が偏執狂的で面白い。2017/06/26
イタロー
3
アルトーがメキシコで秘儀を体験する。ドゥル―ズ=ガタリによる彼の文章の引用がよかったので手元にあったのを読。『アンチ・オイディプス』がアルトーの思考の強い影響下にあることを確認。濃密な描写が圧倒。2022/05/25