出版社内容情報
簡単な殺しを引き受ける人物を紹介してほしいと頼まれたリプリーはある男を思いつき……リプリーのゲームが始まる。名作の改訳新版。
パトリシア・ハイスミス[ハイスミス,P]
1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。
佐宗 鈴夫[サソウ スズオ]
静岡県生まれ。翻訳家。早稲田大学文学部卒。訳書にハイスミス『死者と踊るリプリー』、ユンガー『終わりなき戦いの地』、レベルテ『サンタ・クルスの真珠』など多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
76
余命少ない男が残された家族のために依頼された殺人を犯す。しかし、要求はエスカレートして・・・。しかし、なんで調子に乗るリーヴスの方を黙らせないのか分からない・・・。罪を犯し続けるトムと無垢と善良さ故に堕ちていくジョナサンの関係性は、HANNIBALのレクター博士とウィルの関係性に酷似しているようにも思える。一方で後半からイラついてくるシモーヌはシーズンを重ねる毎にウザさが増す『ブレイキング・バッド』のリンダや『HANNIBAL』の善意を振り回してから逆恨みする勘違い女みたいだ。だからこそ、苦く、切ない。2017/02/21
星落秋風五丈原
34
思いがけない状況に身を置くことによって誰でも自分のような殺人者になり得るのか。それともそうなれるのは自分だけか。自分が特別であって欲しいと願う一方で、半身を探すような気持ちがあるようにも見える。やはりハイスミス、女性と男性の絡みより男性間に漂う感情を描くのがうまい。当初ジョナサンの妻シモーヌに共感していたのがある時点を機に恐ろしくウザイ存在に映る。半身たる存在が見つかることはリプリーにとっては幸福だろうが、世間にとっては完全犯罪を起こせる人間がもう一人存在することになる。さて、本当のところはどうなのか。2016/11/12
阿部義彦
18
これは凄かった。トム・リプリーシリーズの第三弾です。最後の方になってからは読むのが勿体なくて休み休み読んだ位です。いやぁ、トムいい奴じゃないですか!面倒に巻き込んだジョナサンを助けて自らの手を汚すなんて。行きがかり上かなりの数のマフィアを始末しますが、ジョナサンの妻のシモーヌが曲者。「女とは不可解だ、時には男より道徳的な態度をとるかと思えば、とくに政治的な不正に対しては男より柔軟で矛盾した考えを平気で受け入れる。」リプリーを助ける為に死んだジョナサン。シモーヌも終いには金の為にリプリーを売れなかった。溜息2017/05/01
ふるい
14
リプリーシリーズ第三弾。いや〜〜〜面白かった。ジョナサンと一緒の時のリプリーが妙に上機嫌で、仲間ができて良かったね〜と嬉しくなりました(周りに死体ごろごろ転がってるけど)。もはや殺しに躊躇いもなくなったリプリー、果たして今後もベロンブルでの貴族的生活を守れるのか?2020/10/26
秋良
14
余命いくばくもない善人に、報酬をちらつかせて殺人をさせることは可能か?というのがリプリーのゲーム。善人ジョナサンがまあ当然のことながら殺人を請け負うまで悩むので、展開が遅い。いやこれもう少し短くても良くない?それにしてもリプリーの勝負強さはなかなか。2020/06/15