内容説明
ニーチェの最も美しく、最も重要な著書が、冷徹にして流麗な日本語によってよみがえる。「この書物の言葉は、氷晶を融かす春風にも似ている「…」。いまだ冬の圏内にありながら、冬を打倒する勝利が予感されるのだ。」「神は死んだ」と宣言しつつ永遠回帰の思想をはじめてあきらかにしたニーチェ哲学の中核をなす大いなる肯定の書。
目次
「戯れ、企み、意趣返し」
第1書
第2書
第3書
第4書―聖なる一月
第5書 われら怖れを知らぬ者
プリンツ・フォーゲルフライの歌
著者等紹介
ニーチェ,フリードリヒ[ニーチェ,フリードリヒ][Nietzsche,Friedrich]
1844‐1900。著書『悲劇の誕生』、『反時代的考察』、『人間的な、あまりに人間的な』、『曙光』、『ツァラトゥストラ』、『善悪の彼岸』、『偶像の黄昏』、『この人を見よ』など。ヨーロッパ思想のありかたを根底から揺るがした哲学者
村井則夫[ムライノリオ]
1962年生まれ。明星大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
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syaori
57
これまでの欧州社会の旧弊や思考習慣を越えていこうという熱い思いに満ちた一冊。作者が語るのは「一人立ちした人間たれ」ということ。これまで村や社会に利することが最上の道徳だったけれど、そうではなく、孤立や孤独を恐れず自分の「真理」「自分独自の理想」を掴むこと。道徳や価値を判断するのは神ではない、社会ではない、個人なのだということ。そしてそれは、流れる時や人生のなかで変化してゆくものだから、変化を恐れないでもっと遠くを、高みを目指し「古い殻」を破っていくこと、特に最終章は作者のそんな思いが溢れているようでした。2019/01/18
chanvesa
33
強い人間への切望は、世界が「秩序・組織・形式・美・知恵などわれわれの美的人間性の標識がかけているという意味での混沌」(198頁)であるが故と思う。「神殺害」はその過程の出来事なのかもしれない。さらに、これまで自然に備わっていた能力としてのイメージがある愛は、所有欲の変奏と暴露され、「友情」(84頁)への期待が抱かれる。そして”midleiden"から”midfreude"への価値転換(349頁、それはParsifalの否定)。そんなの無理、だけど「星の友情」の応援は少しだけ勇気を与えてくれる。2015/08/12
tonpie
22
静かなユーチューバーが「仏教的な観点からは、ニーチェの発狂は因果応報」と恐ろしいことを言っていた。以下第三書より引用。私の想う、ニーチェの猛毒のエッセンスです。 【楽園から】「善悪というのは、神の抱く偏見だ」そう蛇は語った。 【動物たちの批評】動物たちはわれわれ人間のことを、自分たちの同類と考えているのではないだろうか。ただし、やっかいにも動物らしい良識を失った同類であると。要するに、気のふれた動物、気の毒な動物であると。 ↓ 2022/10/27
またの名
12
障害や病気をたしかにその他の低劣だと見なしたものと並べてニーチェは罵倒するけど、万人に理解されないように書くというその文章の解読は困難。哲学者から見れば最強の権力者も奴隷にすぎないばかりか、高貴な者が「ほとんど狂気すれすれ」の例外者で集団本能とは相容れないとなると、晩年の狂気はミイラ取りがミイラになったような単純な話とは言えない。常軌を逸したものや道化じみたものが乱痴気騒ぎを起こすサトゥルヌス祭を祝って幕を開ける愉快で奇妙な哲学書が、世紀をまたいでようやく日本語でもちゃんと意味をなす流麗な文体に訳された。2016/07/28
記憶喪失した男
9
初版は1892年であり、これは第二版1897年の翻訳。そのため、本書に出てくる「神は死んだ」が1893年~1895年の「ツァラトゥストラはこう言った」とどっちが先かわからない。「永劫回帰」について書いてある書だという人もいるが、ぼくはこの書に「永劫回帰」の内容を読み取らなかった。2017/11/23
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- タンジール、海のざわめき