内容説明
高校教師をしていたドゥルーズが教科書として編んだ、マリノフスキーからベルクソン、マルクスにいたる全六十六編のアンソロジー『本能と制度』と、処女作「キリストからブルジョワジーへ」。これら幻の名著を詳細な訳注によって解説し、潜在性、差異、多様体、力といった、ドゥルーズ哲学の原点を明らかにする。
目次
キリストからブルジョワジーへ
本能と制度(制度―傾向性を満足させるための間接的・社会的な手段の体系;本能―傾向性を満足させるための直接的で種に特有な手段の体系;本能と制度との独創性;状況と適応;技術、芸術、遊戯;本能と知性;人間と動物)
著者等紹介
ドゥルーズ,ジル[ドゥルーズ,ジル][Deleuze,Gilles]
1925‐1995。哲学者
加賀野井秀一[カガノイシュウイチ]
1950年、高知市生まれ。中央大学理工学部教授。専攻は、仏文学、現代思想、言語学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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∃.狂茶党
9
分量的に非常に短い、ドゥルーズ自身の文章は、至って読みやすく、フランス現代(?)哲学ってめんどくさいと思ってしまう人にも、わかりやすい。 また彼による、教科書的アンソロジーは、関心のありようが浮き上がってくるもので、なかなか楽しい。 (翻訳のせいか引用された文が均一化しがちに思える) これは教科書というよりも準備体操。 そういった意味で入門編だと思います。 福音書は世界を救うためではなく、世界から私を救うためにもたらされたのだから。 2022/10/16
またの名
8
ブルジョワチームvs革命チームの対決と表現して社会を記述するセンスが今一つ不可解な哲学者の、若書き論文&編集した教科書。飢えたときや性欲に渇くとき人間種は貨幣や結婚などの制度によって欲求を満たし、満足のための方法を本能的に組織する動物と対照をなす。このように前提して古今の思想家とか研究者が制度と本能について考えた議論を抜粋した引用集には驚くほどはっきりと、後々の機械やアレンジメントの概念および無意識論へ至る編集視点が出現。哲学の外部としての動物行動学を、20歳代の頃からマニアックに漁り回ってた渉猟が判る。2023/04/14
Z
8
婚の形態や売春の形態を説明する訳ではない。よって欲求だけで形態やプロセスを説明できない場合、本能から制度を分離できるだろう。制度はそれを充足させる欲求からみれば肯定的である。そもそも本能には快不快の判断こそあれ生来の禁止はない。欲求にとって社会的なものとは欲求を規則付けることであり、それが制度の要件である。社会的なものとは欲求の総体でなく、その手段たる制度の総体である。制度を通し、欲求の規則付け、計画性など知性を身につける。ここでドゥルーズは制度と法律を分けている。制度とは有機的なもので国家、団体、組合 2018/03/12
Z
8
二編。前編は若書きで面白さもあるが論理が雑ー無視。後編は内容は半端だが明晰。自然と文化という使い古された対立だがリセの教科書でもあり分かりやすくも書いており面白い。自然を本能、文化を制度と変奏し双方内部からの欲求を満足させる場と定義。本能とは種の環境で刺激を受けると環境内に満足の対象を求め充足させる。制度とは種による環境の改変された場と定義。それは欲求をよりよく満足させることもあれば、欲求自体を改変することもある。欲求と制度に関していうと欲求の存在は制度の存在理由を十分に説明しない。性的欲求の存在が結 2018/03/12
mstr_kk
2
必要があって、前半「キリストからブルジョワジーへ」を精読。処女論文からドゥルーズ節だが、壮大な議論でありつつも、比較的分かりやすい。たった21歳で、マルクスをはじめ多くの知識を見事に消化し、こんなに面白いものを書いてしまうとは、まぎれもなく天才だなと思う。ただ、訳者による紹介文は無駄に難解なのではないだろうか?後半のアンソロジーもたいへん興味深いが、今回は流し読み。2013/05/21