内容説明
二人の詩人、ダンテとウェルギリウスは二十四時間の地獄めぐりを経て、大海の島に出た。そこにそびえる煉獄の山、天国行きを約束された亡者たちが現世の罪を浄める場である。二人は山頂の地上楽園を目指し登って行く。永遠の女性ベアトリーチェがダンテを待つ。清新な名訳で贈る『神曲』第二部煉獄篇。
著者等紹介
アリギエーリ,ダンテ[アリギエーリ,ダンテ][Alighieri,Dante]
1265年、トスカーナ地方フィレンツェ生まれ。イタリアの詩人。政治活動に深くかかわるが、1302年、政変に巻き込まれ祖国より永久追放される。以後、生涯にわたり放浪の生活を送る。その間に、不滅の大古典『神曲』を完成。1321年没
平川祐弘[ヒラカワスケヒロ]
1931年、東京都生まれ。東京大学名誉教授(比較文学比較文化)。『東の橘西のオレンジ』でサントリー学芸賞受賞、『ラフカディオ・ハーン』で和辻哲郎文化賞受賞、マンゾーニ『いいなづけ』の翻訳で読売文学賞・日本翻訳出版文化賞受賞。紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よむよし
113
カトリックの教えとしての煉獄はそれまでもありましたが具体的イメージを創ったのはダンテが最初で以後人々に定着していくのだそうで、それだけでも大変な偉業です。文字とリズムで描く作者の筆が素晴らしく、また誰でも解る日常語なので人々は暗唱したのでしょう。地獄は暗く何の希望もない地底世界でしたが煉獄では印象がガラリと変わり救済への希望がある明るい世界です。生前の善行が足りなかった人はここで修行することで魂が浄化され“天国への階段”を登ってゆく。ダンテの魂自身も体験していき、終盤には導き手がベアトリーチェに交代する。2024/03/28
優希
99
地獄を経て煉獄へ。天国行きを約束された亡者たちが罪を清める場での出来事は繊細なことに違いないように思いました。その中で、山頂にある地上の楽園を目指すダンテとヴェルギリウス。そこに待っていたのが永遠の女性ベアトリーチェでした。ダンテとヴェルギリウスの別れ、ベアトリーチェとの出会いは天国行きの道筋になくてはならないものだったのかもしれませんね。2017/12/13
ベイス
86
地獄篇に引き続き、犯した罪に応じた因果応報が描かれるわけだが、罪のスケールも応報のスケールも地獄篇には及ばず、小粒感は否めない。終盤ついにベアトリーチェと出会う。自分の死後、別の小娘の誘惑に駈られたダンテをなじるわけだが、ちょっと待てと。自分は銀行家の妻だったわけで、そのあたりの事情は天国篇で説明されていくのだろうか?生命誕生の仕組みの解説で、精液がたどり着く器官を「口に出すよりも出さぬ方が穏当な局部」と表現しているのはいろいろと想像してしまう苦笑。そこまで狙っていたのかダンテに聞いてみたいものだ。2023/03/30
南北
73
ようやく地獄を通り抜けて煉獄にたどりつきます。ここでは罪を浄化することで天国に行けるようですが、永遠でないというだけで煉獄は地獄と変わりないところもあります。煉獄もほぼ終わりそうなところでダンテを先導してくれたウェルギリウスは消えてしまい、ベアトリーチェが先導してくれることになります。ギリシア神話や聖書、さらにはウェルギリウスなどの古代ローマの詩などダンテにとっては常識だったのでしょうが、解説を読まないと何を象徴しているのかわからないところもあって、ある程度の知識がないと読むのが苦しいなと思いました。2020/06/16
優希
47
地獄めぐりを経て大海の島へと降り立ったウェルギリウスとダンテ。地獄を経て煉獄へと導かれたのですね。天国行きを約束された人々が現世の罪を清める場所が煉獄なのですね。山頂にある地上の楽園を目指すダンテとウェルギリウスを待っていたベアトリーチェ。天国への道標がベアトリーチェと言っても良いでしょう。天国への道を歩み始めた象徴なのかもしれません。2024/04/09