内容説明
「シュルレアリスム」という言葉を発明し、「エスプリ・ヌーヴォー」(新精神)という用語を先駆的に使った「若き二十世紀」の旗手アポリネールが、秘密出版した小説。愛欲とユーモアに満ち、才気に溢れたラブレー的世界を彷彿とさせる本書は、デスノスやアラゴンの絶賛を浴び、わが国では渋沢龍彦がエロティック文学の最高峰のひとつに推薦している傑作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
100
詩人アポリネールのエロティックな小説。主人公のヴィベスク公が荒唐無稽な冒険を繰り広げて、結末ではあっけなく死んでしまう。その死に方は独特のもので、アポリネールの詩人としてのモラルが反映されている気がした。エロチックでグロテスクなことが結構描かれているのだが、あっけらかんとした明るい雰囲気が漂っているのが面白かった。2014/07/21
ヴェネツィア
64
世に名高い書だが、正直なところ、その真価が分かったとは言い難い。まず、主人公がルーマニアの郡長(自称では公)であることの必然が納得できない。また、日露戦争時の旅順を主な舞台に物語が展開することも、エキゾティズムという以上の効果があるようにも思えない。ここでのエロティシズムそのものも、多分にエキゾティズムに寄りかかっているように見えるし、身分の高い女性と娼婦、あるいは日本人の(元は貴顕の)娼婦の登場など安直にさえ見えかねない。ただ、ここでも快楽の究極は殺人であり、一万一千本の鞭に打たれる死だ。2013/08/08
nina
8
ピカソの盟友にしてローランサンの元彼、『シュルレアリスム』の発明者でもある詩人アポリネールが26歳の時に執筆した艶笑譚。他にマルキ・ド・サドの年代記『聖侯爵』も収録。『一万一千の〜』は抄訳のため至ってサラッとした展開で、毒気の薄いコメディ風のエログロ話といったところ。あとがきに「もし全訳したらかなりケモノ臭いしつこいものになるだろう」と訳者の飯島さん。個人的にはケモノ臭こそこの作者の持ち味ではないかと思える。とはいえ、物語中にも登場する日本の春画の大らかさにサド的嗜虐性がスパイスとして効いている風な印象。2013/09/12
白黒豆黄昏ぞんび
8
どうしてエログロだと早く読めるのかしら。哲学なし、超絶バイオレンス。なのにユーモアたっぷりな読み物でした。ワクワクしながら読みました。2011/09/13
サリエリコ
4
造語「シュルレアリスム」の生みの親というだけで(真偽は定かではありませんが)、頭が下がるのに。なんたるエログロ!上手く形容出来ないよ。ハイ・センスとか、センスない賞賛の言葉しか浮かばない。2013/03/30
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