内容説明
今世紀初め、シベリア・ウスリー地方の探検調査にあたったアルセーニエフは、密林のなかで原住民の猟誌デルスー・ウザーラと出会い、強くひきつけられる。シベリアの大自然のなかで獣も鳥も魚も、密林の生き物たちすべてを、ひとしく「ヒト(人)」とみなして共棲するデルスーに、アルセーニエフは高貴な人間性をみいだし、深い畏敬と愛情をこめてデルスーを活写する。
目次
デルスー・ウザーラとの出会い 1902年の探検(ガラス谷;デルスーとの出会い;イノシシ狩り;朝鮮人村での出来事 ほか)
デルスー・ウザーラとの再会 1906年の探検(ウスリー江をさかのぼる;旧信徒の村へ;山越え;河から海へ ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
35
ヤマザキマリの息子さんの名「デルス」のもとになったという「デルスー」って、どんな人物なん?という興味で読み始めた。百年以上前のシベリアの、家も家族もなく自然と共に暮らすゴリド人(原住民)の猟師と、そこを探検調査していた著者が出会い、その日々を生き生きと描き出した本書。太陽も土も水も火も、獣も鳥も魂を持つとみなし「人」と呼ぶデルスー。虎に呼び掛ける場面や、また著者が装備もなく大吹雪に巻き込まれた際や、足に刺さったトゲのせいで歩くのもままならぬ状態で山火事に襲われた際のデルスーの的確な対処の場面が印象的だった2025/08/08
ちゃっぴー
10
著者がシベリア沿海を先住民デルスーをガイドとして調査探検した記録。「万物すべてに魂がある」と自然の中で生きるデルスーの知恵と、他者へのいたわりの心に現代社会のなかで失われつつあるもの気付かしてもらう。黒澤明監督が映画化してるので、それも観てみたい。下巻へ続く。2014/04/11
miu_miu
0
日露戦争直前にロシア極東に配属された著者の探検調査記。デルスー・ウザーラとは探検中に出会った土着民ゴリド族の狩猟民の名前。意気投合し同行することとなった彼は、家も家族も持たず荷物もリュックと銃だけで狩猟をしながら山中を渡り歩き、獲物を換金・交換し暮らしていますが、著者はその生きるための観察力と対応力、万物に対する敬意と畏れに引き込まれます。訳者は満鉄の調査員で、職務の傍らこれを訳し満州で発刊。この1975年版が改訳決定版です。天候の変化をズバリと当てたりトラに語りかけたりする自然との共生に興奮しました2015/11/08