内容説明
中国は不思議な国だ。現実がフィクションを食ってしまうほどこわい。文字通り食人の記録からはじまって、自然の恐怖、言語の怪談、政治、習俗ととりあげてゆけばきりがない。このような「現実」の記録から、SFを含む未紹介の現代文学までを新しい視点からとりあげ、従来の「中国怪談集」とはガラリと趣向を変えた画期的アンソロジー。
目次
人肉を食う(陶宗儀)
揚州十日記(王秀楚)
台湾〈フオルモサ〉の言語について(ジョージ・サルマナザール)
ボール小僧の涙(『点石斎画報』より)
ワニも僕の兄弟だ(『点石斎画報』より)
宇宙山海経(江希張)
薬(魯迅)
阿Q正伝(魯迅)
“鉄魚”の鰓(許地山)
死人たちの物語(黄海)
五人の娘と一本の縄(葉蔚林)
北京で発生した反革命暴乱の真相(中国共産党北京市委員会宣伝部)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
乃木ひかり
13
丸善復刊フェアにて。このシリーズは中古屋行っても見なかったりすぐ売れてしまうから大変嬉しい。確かに求めていたのは聊斎志異のような話だが、言われてみれば似たような話をいくつも読むよりは良かったかもしれない。この怪談集はいろんな意味で怖い。特にラスト。国家による壮大な小説か、それとも事実を伝える文章か。笑えない怖さが漂う本2019/04/13
ヴィオラ
9
「怪談集」と銘打ちながら、一般的な怪談の枠には全く収まらないラインナップ。今回は「中国科学幻想文学館」で紹介された作品目当て。つまり、SFとして捉えられる作品も入っているという事。河出文庫の怪談集シリーズ(?)は割とそういう傾向なので、怪談という言葉だけでスルーしてる人は案外好きな作品を読み逃しかねないので注意。 「宇宙山海経」は、まさか翻訳で読めるとは思ってなかったので嬉しかったです(面白いわけではないw)あとは「鉄魚の鰓」が「〜文学館」で紹介されていた作品。2018/10/10
きりん
4
復刊の方を読了です。 途中から「怪談……??」と思ってましたがあとがきを読んで納得。予想してたのとは違いましたが、面白く読めました。2019/04/08
スターライト
4
タイトルにある「怪談」から想像すると、なにやら得体の知れない幽霊や怪物が出てきそうな感じだが、ここにはそういった話はほぼ現れない。では、どんな話が収められているのかというと、それは「人を喰ったはなし」であるということだ。印象に残ったのは「宇宙山怪経」「“鉄魚”の鰓」「五人の娘と一本の縄」。特に「五人の娘と一本の縄」は、思春期の五人の少女たちが一緒に首つり自殺するという毒がきつい不思議な話。一読の価値あり。2010/04/21
misui
3
編者がとんでもない逆張り精神を発揮したそうで自分が期待していた志怪小説のようなものは収録されておらず。中国の思想風土の怖さそのものを見せつけるかの如きラインナップです。珍品が読めてこれはこれで。中でも明末清初の虐殺サバイバーによるルポ「揚州十日記」は時々遭遇する人類の限界的テキストで、他、奇譚や魯迅や人民日報の天安門事件に関する記事など、求めてたのはそれじゃないんだけど確かに怖いっすね…と身を竦ませつつ本を閉じました。2022/11/07
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