内容説明
深夜、安アパートの入口前に円盤が落ちてきた。住人たちが見守るなか、緑色の宇宙人が現れる。「夜分おさわがせして申しわけありません。上でちょっと事故がありまして」。アパートで面倒をみることになるが…懐かしい昭和の風俗、縦横な語り口、エンタテインメントの巨匠がおくるSF作品集。全10編収録。
著者等紹介
半村良[ハンムラリョウ]
1933年、東京生まれ。高校卒業後、20以上の職業を経験した後、広告代理店に勤務。62年、「収穫」で第2回SFコンテストに入選、翌年、同作が「SFマガジン」に掲載されデビュー。『石の血脈』で第3回星雲賞日本長編部門、『産霊山秘録』で第1回泉鏡花文学賞、『雨やどり』で第72回直木賞、『岬一郎の抵抗』で第9回日本SF大賞、『かかし長屋』で第6回柴田錬三郎賞を受賞。2002年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケンイチミズバ
72
地球最後の日まであと二日、それでも板前は仕事に打ち込みます。すがりつく妻を振り切り店に。呆然としていた弟子に 難しい魚の調理を教えるというあまりの無駄さに笑うしかありません。伊坂幸太郎の「週末のフール」では、一通りの暴力が過ぎ、あきらめの後に描かれる平穏な最後。これもアリかな。半村良のこの感覚は、昔よく読んだカッパノベルスだな。昭和のセンス満載でやはり古さを感じる。小松左京の「復活の日」など全く古さを感じませんが、その違いはテーマの壮大さの対極にあるような日常の庶民のもとに繰り広げられるSFギャグだから。2025/08/21
Porco
16
半村さんは『戦国自衛隊』や『産霊山秘録』といった、娯楽作品にしては中々重厚なSF時代小説を書く作家という認識のため中々意外。昭和感漂う人情噺や、同時代の筒井康隆作品のような多少の毒が入ったスラップスティック作品などが収録されているからか、前述した認識では読み初めて意外と思われるのはご勘弁願いたい。ユーモア溢れるタッチとストーリーテリングは中々だが、何より昭和の娯楽の空気感を垣間見ることができるのが実に良い。2025/08/04
Ryo0809
3
1970年代央に発表されたSF短編集。どれも噺家が語る落語噺のようなタッチで、たいへん面白い。とはいえ、社会問題批判の視点やら、ビー玉遊びなどのノスタルジックな話、街角ルポのような軽妙な話、宇宙人と安アパートの庶民との心温かな交流など、バラエティに富んだ短編集となっている。人情やらお色気やらも交ざっていて、昭和の時代の娯楽のあり方がほのぼのと偲ばれるところも楽しい。2025/06/16