内容説明
幻想怪奇文学の巨匠が晩年に遺した時代小説が、一堂に集う。復讐に向かう見目麗しい若侍との出会いに始まる愛憎の推理譚「斬られたさに」、異色のノワール「白くれない」、生前未発表の本格推理「狂歌師赤猪口兵衛」ほか全五編を収録、ここに初めて夢野久作時代小説全集、成る。全一巻。
著者等紹介
夢野久作[ユメノキュウサク]
1889年、福岡県生まれ。作家。慶應義塾大学中退。陸軍少尉、禅僧などを経て、1926年、雑誌「新青年」の懸賞に応募した「あやかしの鼓」が入選し、探偵小説作家としてデビュー。35年、構想から10年以上の歳月をかけた大作『ドグラ・マグラ』を発表、代表作となる。翌36年、47歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
58
時代小説も夢野久作に掛かれば、あら不思議!外連味と諧謔と皮肉のエッジが効いた「切られたさに」や「忠君忠之」は映画『切腹』に先んじて武士道の形に囚われるが故の非人情を痛烈に抉り取っている。特に後者のお涙頂戴なラストも「いや、これって忠之が自ら正しにいけば、よかっただけやん。癇癪だけ起こしていた男を何、美談にしとんの」と醒めた目で見てしまうのです。一方、「名娼満月」は娼妓に袖にされた男たちの復讐のための奮起譚の着地点が意外すぎる。「白くれない」も運命が追いかけてくると見せかけての現実的な事実を使った呪いが絶妙2025/01/16