内容説明
今から七十五年前、ひとりの青年僧が、国宝・金閣に火を放つという未曾有の凶事が起きた。彼・林養賢の懊悩、そして狂気に秘められた真相とは何だったのか?鬼才・三島由紀夫に青春の総決算となる最高傑作を書かせた出来事の核心に、精神病理学の第一人者が臨床知を傾けた分析から迫る、第47回大佛次郎賞受賞ノンフィクション。
目次
プロローグ 金閣焼亡
第1章 動機はあとから造られる
第2章 零度の狂気
第3章 他者の影
第4章 焼かなければならぬ
第5章 離隔
第6章 邂逅―小説『金閣寺』
第7章 ナルシシズムの球体
第8章 生きようと私は思った
エピローグ まつろわぬ者たちへ
著者等紹介
内海健[ウツミタケシ]
1955年、東京都生まれ。精神科医。専門は精神病理学。東京大学医学部卒業。東大分院神経科、東京藝術大学教授・保健管理センター長などを経て、東京藝術大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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みこ
17
精神科医である著者が金閣寺放火犯と三島由紀夫を精神分析。時間を起こした犯人を分析することはよくあることだが、それを小説化した作家まで分析という点が珍しい。本来陽の気質である三島の抱えていたコンプレックスとナルシズムからの脱却が陰の気質であったであろう放火犯・林養賢のナルシズムと邂逅したことで戦後文学屈指の名作が産まれることになる。しかし、筋肉ってそんなに人の心の鎧となり得るものなのか?2025/01/13
たつや
7
興味深く読んだ。「金閣寺」を読んだ、最初の印象が間違いなかった事を確認出来、嬉しい。犯人の林養賢の詳細、精神分裂症と結核、最後は病状悪化で減刑措置となり、釈放された。歯痒くもやむを得ない。本書は金閣寺以外の書評等もあり、幅広い分析本でした。2025/04/10
ユウユウ
4
林養賢について初めて深く知った。その出自や人間性について三島由紀夫の『金閣寺』とはかけ離れたことろもありつつ、分裂症の過程や症状は専門家も認めるところにあったというのは面白く感じた。2025/01/14
Go Extreme
3
三島由紀夫の創作活動: 裁判記録や病歴の調査 金閣やその周辺を詳細にスケッチ 人物の生涯や病歴→作品の骨格をほぼ忠実に描写 内面的な探求と心理描写: 自己の存在感に苦悶→狂気の起点 内面の葛藤→社会の不条理への反発により表現 金閣寺のテーマ: 美に対する嫉妬→放火 行動と認識の分離に苦しむ→自己の存在を確立しよう試みる 文学的手法: フィクション+現実=物語に迫真性 キャラクターの複雑さ・人間関係の非対称性→作品に深み 言語と表現: 言語を通じて自己の内面を表現 言語の特異性≒作品の深みと美しさの要因2025/01/15
武夫原
2
著者の文学的な知識を十分に活用しながら解説した本であり、文学的な話は分からなかったが、林養賢の人となりが分かった。事件当時は、すごい数の報道やら解説が出ていたんだと思う。事件の衝撃は、すごかったんだろうと思う。2025/01/03
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