出版社内容情報
阪神・淡路大震災のあらゆる問題を緻密に追究したこの書物を、私たちの社会は何も生かさずに過去に置き去り、そのまま東日本大震災、能登半島地震を迎えてしまったのだ。反省は決して遅過ぎない。急いで議論しよう。 ――いとうせいこう
あれから30年。『日本沈没』の著者、渾身の記録。
一九九五年一月十七日午前五時四十六分五十二秒、阪神・淡路を襲った最大震度七の直下型地震。小説『日本沈没』の著者は責任感に突き動かされるように、一年間にわたり全貌の記録と総合的な解析を行い、この国の災害対策の様々な問題点に迫ってゆく。過去と現在の災害を風化させないために、未来の災害に備えるために――。災害記録の名著にして、永遠の警鐘の書。
解説=最相葉月
■目次
はじめに
あの日から七十五日
災害列島に住む私たち
『日本沈没』の激震が現実に
発展続けた阪神地区を十秒で破壊
【対談】記録者の目(神戸新聞論説委員長・三木康弘)
第一章 一九九五年一月十七日午前五時四十六分五十二秒
混乱から年が変わった一九九五年
たった十秒間のできごと
「その瞬間」を記録した映像
「その瞬間」の消防局中央管制室
電力とガスの復旧
「水」の問題
取り消された「神戸震度6」
依然続いた「東京情報」
放送メディアの教訓
届かなかった「一年生議員」の叫び
第二章 全貌を把握するために
あの日から半年
心細い気象台の観測網
震度計測の意外
軽視される強震動観測
計測震度計に「航空電子工学」が
【対談】地震の予知は可能か(京都大学教授・尾池和夫)
二十四年ぶりの防災基本計画改定
自衛隊の救助活動
自衛隊の組織配備
露呈した役所組織の欠陥
【筆者に聞く】
【対談】活断層とは何か(断層研究資料センター理事長・藤田和夫)
【対談】前兆現象(前大阪市立大学理学部長・弘原海清)
欠けていた「海」の視点
「海」を取り戻す街づくり
第三章 再生に向かって
都市文化の蓄積が復興に
【対談】心のケア(精神病理学者・野田正彰)
十カ月目の被災地を空から見た
暮れゆく悪夢の九五年
「神戸の興行魂」いまだ死なず
「神戸人気質」踏まえた復興を
再建に向かう地元メディア
【対談】神戸大学の試み(神戸大学工学部長・片岡邦夫)
胸打つ市民の視線
文化情報活動にもボランテ