内容説明
歌舞伎界の名優・中村雅楽のもとには、舞台の楽屋、行きつけのすし屋…どこにいようと謎が舞い込む。入院中のベッド上で見事な謎解きを披露する直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ、ひかり号車内の一幕物さながらの名品「グリーン車の子供」、読者に別れを告げる感涙の大団円「むかしの弟子」まで、雅楽の人間味と名推理が堪能できる11篇。
著者等紹介
戸板康二[トイタヤスジ]
1915(大正4)年、東京に生まれる。慶應義塾大学国文科卒業後、『日本演劇』編集長時代から歌舞伎評論を発表し、その方面の業績により戸川秋骨賞、芸能選奨文部大臣賞などを受賞。江戸川乱歩のすすめでミステリーの執筆を開始する。1958年に発表した「車引殺人事件」の好評を受け、中村雅楽シリーズを数多く執筆。1959年「團十郎切腹事件」で直木賞、1976年「グリーン車の子供」で日本推理作家協会賞を受賞。1993(平成5)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
29
日常の謎にシフトし、謎の中にある人間味とりわけ中村雅楽という人物へのフォーカスを明確にした編集がされている。『團十郎切腹事件』『時の娘』をオマージュしトリックは分かりやすくはあるがそこで終わらせないのがニクい。『グリーン車の子供』雅楽が子供の面倒を嬉々としてみているのが目に浮かぶよう。『楽屋の蟹』雅楽にも合わない人がいたのかという可笑しみと蟹嫌いの可笑しみ。『元天才少女』の元弟子へのはたらきかけが『芸養子』という布石を経て『むかしの弟子』で回収される有終の美。花道を去る老優への拍手を送りたくなる。2024/01/14
だるま
15
歌舞伎界の名優・中村雅楽が名探偵さながらの推理で謎を解く11編の短編集。この本は「日常の謎」という括りになっていて、著者の初期の代表作である『團十郎切腹事件』と『グリーン車の子供』の両方が収められている。この2作が同時収録された本は初めてだとの事。両方再読だったが、やはり『グリーン車の子供』は名作だと認識した。シリーズの終焉を告げる『むかしの弟子』が巻末にあるのも素晴らしい。全体的には、歌舞伎界の事が詳しい説明も無く出てくるので若干の読み難さを感じる。それでも、僅かな手掛かりからの雅楽の推理は堪能出来た。2024/03/10
一五
10
こういうのが再文庫化されるって嬉しい。読んでないのがあるかもと手に取った。ほぼ覚えてなく、初読も同然というありさま。古めのだし、時代がかってる所もあるが、名優雅楽さんの粋な様は、今読んでも良い。「むかしの弟子」雅楽さんらしいな。全編 堪能したけどね2024/09/08
つきみ
6
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」は読みごたえがあった。八代目團十郎が自死する前のエピソードは史実ではないのはもちろんわかっているけれど情景が目に浮かんでくる。老齢を迎えた歌舞伎俳優が周囲から尊敬されている様子から豊かな人間性を感じるし、穏やかな人柄と鋭い考察力を兼ね備えた雅楽の虜になった。歌舞伎にも俄然興味が湧いてきた!2024/02/07
takao
2
ふむ2024/08/24