内容説明
良き作家は正しき言葉を書くことを忘れてはならない。綺堂は江戸の言葉とどのように向き合ったのか?そして江戸から明治へ言葉はどう変化したのか?今も古びない創作論に、「半七捕物帳」の思い出、怪談奇譚、明治時代の寄席と芝居の記録などを収録した、綺堂の魅力満載のベストエッセイ集!『綺堂随筆 江戸のことば』新装改題。
目次
江戸のことば(戯曲と江戸の言葉;孝子貞女;劇の名称;言葉は正しく;喜劇時代;新浮世風呂;日記の一節;甲字楼夜話)
怪談奇譚(夢のお七;鯉;深川の老漁夫;怪談一夜草紙)
明治の寄席と芝居(寄席と芝居と;明治以後の黙阿弥翁;『三人吉三』雑感;竹本劇の人物研究)
創作の思い出(自作初演の思い出;「半七捕物帳」の思い出;半七紹介状;はなしの話;目黒の寺)
著者等紹介
岡本綺堂[オカモトキドウ]
1872年生まれ。本名敬二。旧御家人を父として東京に生まれる。東京府中学校卒業後、東京日日新聞に入社。記者のかたわら戯曲を書き、『修禅寺物語』『番町皿屋敷』などの名作を発表。捕物帳の嚆矢「半七捕物帳」シリーズで人気を博した。1939年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本正行
85
図書館本、同姓だからかもしれないが、以前から関心は持っていた。なにかしら縁、年譜を観ると、誕生日が同じ日、十月十五日だ、著者は明治5年、私は昭和27年、同姓だから、ひょっとしたら、どこかでつながっているかもなんて考えつつ、親近感をもって読んだ。江戸時代の読み物、戯作の紹介から、様々な当時の文物の有り様。歌舞伎や落語など、なにかこの本で関心と興味を持った。怪談話、なにか特殊な感想も持ってしまう。現代劇・ドラマなら、そんなもんって感じだが、江戸時代の話となると、なぜかリアルに感じる、もっと読みたいと思った。2024/02/10
べあべあ
6
岡本綺堂の歌舞伎や落語の短評やエッセイ的小編集。明治の東京生まれならではの視点が面白かったです。かつて”勤番者”と下に見られていた人々が維新後の劇場での上客に転じた、というのは、明治の歌舞伎の混乱ぶりを考察するにも成る程な指摘。また、黙阿弥達が明治の現代劇”ざんぎりもの”で成功できない様子から、歌舞伎は時代に取り残され役者は能役者化してしまうと嘆く視点も、現在から視ると非常に興味深い。綺堂は黙阿弥の世話物は忘れられ却って時代物が残るだろうと予言しますが、幸いにもそれはハズレましたね。2024/03/18
SOLVEIG
3
タイトル通り、創作にまつわるあれやこれや――元ネタについてだったり、創作の様子だったり、あるいは劇評だったり……と思ってた以上に色々な内容で、面白く読めた。読めたけど……副詞・接続詞の漢字表記にはルビ付きもあるのだけれど少々手こずりました。ま、おかげでかなり覚えました!? 他にも、今までよく分かってなかったけど「そういうことだったのか!」と理解できた事柄もいくつか。気になる作家のひとりではあるのだけれど、何から読んだらいいかな?と思いつつなかなか手が出せてないので、年譜に出てくる作品名を参考にしたいなと。2024/05/15
Tatsuo Ohtaka
3
「半七捕物帳」の作者によるエッセイ集。戯曲や小説を書くうえで、どのように言葉と向き合うべきか。江戸からと明治に変わって、言葉はどう変化していったのか。その他芸談も面白く、「寄席と芝居と」など実に味わい深い。2024/03/18