内容説明
破竹の勢いで平家を追討する義経。那須与一の扇の的を皮切りに屋島を落とし、壇の浦の海上を赤く染めあげる。はたして、安徳天皇と三種の神器の行方やいかに。一方、都は大地震に見舞われ、頼朝の不興をかった義経は都を落ちていく。日本文学屈指の名作、全身全霊の語りもついに終幕を迎える。「後白河抄・四」も完結。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
1966年生まれ。98年『13』でデビュー。『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞、日本SF大賞、『LOVE』で三島賞、『女たち三百人の裏切りの書』で読売文学賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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巨峰
43
最終巻。屋島の戦いや壇ノ浦の戦いは、前半で語られる。中盤以降は、戦いで生き残った武者や女性の悲哀が語られる。男は幼子、子供まで殺され、女は大切な存在を失う。数多の平家の人々の鎮魂として語られたこの物語は、建礼門院と後白河院との語らいで幕を閉じる。平清盛の悪逆無道は、その子孫に滅びをもたらした。後白河院の悪行は、この物語のあと、後鳥羽上皇やその子らに悲惨な運命をたどらせるのだ。2024/11/10
みつ
29
最終巻は、屋島の戦いを前にした義経と梶原景時の戦を巡る諍いから。ここでの景時の恨みが、先の義経の運命につながる。壇ノ浦の合戦では四国の武士が宣託もあってか源氏側に付き、平家の多くは入水し、さもなくば捕えられる。後白河法皇はこの間も院宣を乱発し義経の身にも危機が迫るが、その先は語られない。語られるのは専ら平家の人々のその後。法然も登場する中語り手も次々と変わり撥の音が高まる。最後の「灌頂の巻」では撥は止み、時間も少し巻き戻す形で出家後の建礼門院を法皇が訪れ、六道を語りあう。天人五衰の喩えが、終わりに響く。2024/08/24
こちょうのユメ
15
屋島の戦いから始まり、有名な那須与一の登場。壇ノ浦の海戦へと突入。平家軍の敗北と幼い安徳天皇の悲劇的な最期。そして義経と頼朝の対立があり、義経は奥州へ逃れ、物語の舞台から消える。頼朝の冷酷さが凄まじい。平家残党に対して苛烈な処罰が行われた。末裔の六代は命を助けられるが、数年後に処刑されるという悲劇が待っている。物語は建礼門院の晩年にうつり、彼女から平家の栄光と没落が語られる。話は哀愁をおびた鎮魂のトーンへと変わり、幼い安徳天皇の最期には涙がこぼれる。そして、建礼門院の往生で、このながい物語は幕を閉じる。2024/11/08
播州(markⅡ)
6
勝浦の合戦。あの扇の的よ。那須与一の。弓の名手と名高い。が、続く壇之浦。そのレベル、実はごろごろいたのが当時の日ノ本やべぇなぁ。平家は許されず、根切、なで斬り。失われるも、残される声、声、声。のちの世の琵琶法師たちが集め、語り継いだ声。鳥肌しかでない。女院もお隠れになられ物語が終わる。印象的なのが、最後の一文。「女たちもまた。穢土より、浄土へ。」おそらくこの物語に出てくる一切の人々は極楽浄土へ旅立たれたに違いない。それこそ清盛入道でさえ。え?いいの?懐広すぎひんか?それでこそ鎮魂の物語足りえるのだろう。2025/05/04
十文字
5
テレビアニメが個人的にはよかったと思ったので、原作となった古川訳を。平家物語は小学生の頃に内容がマイルドな児童向けのダイジェスト版しか読んだことがなかったので、今回は細かいディテールが知れた。2巻3巻あたりが盛り上げどころなのだけど、読んでいてきつかった。2024/01/23