内容説明
東に頼朝、京に義仲、西に平家、天下は三分され、源氏の白旗が京都を埋め尽くす。後白河法皇から征夷将軍の院宣が頼朝に下り、義経が京を目指す。一方、義仲は追い詰められ、巴を東に逃したのちに最期を迎える。宇治川の先陣争い、ひよどり越え、熊谷直実と敦盛…琵琶の撥音もおのずと高まる、入魂の新訳。書き下ろし「後白河抄・三」収録。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
1966年生まれ。98年『13』でデビュー。『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞、日本SF大賞、『LOVE』で三島賞、『女たち三百人の裏切りの書』で読売文学賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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巨峰
47
琵琶法師は滅びの琵琶の音を奏でる。3の最も印象に残るのは、一の谷の戦い。クローズアップされるのは義経の軍略ではない。平家の公達の最期だ。ここにきて、平家物語は失われた平家の人達の鎮魂のための物語という性質が露わになったと思う。2024/11/10
みつ
24
この巻の前半では木曽義仲が中心に描かれる。表紙も巴御前とおぼしき人物が描かれるが、実際の彼女の場面はごくわずか。この後の熊谷直実と敦盛のくだりなども含め、後年の『平家物語』の語り手が様々を加えたことでその印象はより強まったのであろうか。義経がいよいよ戦いの前面に登場するが、視点は平家側が中心。それだけに後半は、「最期」「身投」「入水」などの語がはいった章が頻出する。重衡は捕えられたのち鎌倉に送られ頼朝と対面。重衡の誇り、両者の文化的素養の違いも描かれる。劣勢ながらも海ではなお強力な平家軍。決着は最終巻へ。2024/08/23
こちょうのユメ
15
平家の都落ちから義仲たちの京での狼藉と悲しい最期。頼朝軍の京都進駐と平家壊滅が描かれ、クライマックスの「一の谷の戦い」を迎える。意外にも、物語の作者は内戦がもたらした国の荒廃に目を向ける。平家によって国は滅び、源氏によって苦しめられ、国内は荒廃した。それなのに、後鳥羽天皇の大嘗会(新嘗祭)は執りおこなわれた。愚かにも、一の谷戦で勝った源氏軍は平家軍を追撃せず、現地の遊女たちと乱痴気騒ぎを起こしていた。こうして作者は最後に「国費の空しい費えと、人民の苦しみだけがあった」と痛烈に批判するのだった。⤵2024/10/20
やま
14
八の巻、から十の巻まで。平家はすでに西に落ち、後白河方法が比叡山に籠っているころから始まる。鵯越えや木曽義仲の死、熊谷直実、平敦盛の話などを含む。◇平家物語は有名なところしか知らなかったが、これらの話の前後関係やましてや一度九州まで落ちた平家が四国や一の谷に戻ってきたといった話は理解していなかった。それぞれの話も、そして相変わらず琵琶の語りを思わせる口調も面白く、読み進んでしまう。◇合戦の場面は残酷な語りであるが、ヨーロッパの中世などの戦いの話に比べ残酷さを感じなかった。慣れてしまっただけなのか?2024/08/28
播州(markⅡ)
7
平家の悪行があった。あった。そしてそのあとは何がある?木曾だ。木曾義仲の暴虐がある。清盛の悪行を超え、暴虐の限りを尽くし、結果都を追われる。それでも、木曾の最期はしみじみと心の琴線に触れる。一の谷の合戦。勝者である源氏方の活躍ももちろん描かれるが、多く紙幅を割いているのはやはり平方がどうなったか。あるいは討ち死にし、あるいは生け捕り。自裁された公達もいる。やはり平家物語は平家を鎮魂し、慰撫するための物語なのだとしみじみ。女人にもしっかり目を向けているのがすごくない!?2025/05/03
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