内容説明
「ヴェネツィアの宿」―はじめてつづられる少女期の記憶。孤独な留学時代と、遠い日の父の思い出。「トリエステの坂道」―夫が愛したサバ。サバが愛したトリエステ。鮮やかによみがえる懐かしい人々の肖像。「エッセイ/1957~1992」―イタリアで暮らしはじめた頃など、二十歳代からのエッセイ24本を収録。
著者等紹介
須賀敦子[スガアツコ]
1929‐98年。兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。上智大学比較文化学部教授。1991年、『ミラノ霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
85
エッセイが好きな人やイタリア文学が好きな人にぜひ読んでほしい本になっている!今年初の修行。ここで言う修行とは全集を読むことである。きつい修行とちがってこの本を読むことは幸せな気持ちにさせてくれる。なぜなら須賀敦子さんの文章がシンプルで味わい深いものになっているからである!この本に書かれている内容は夫のペッピーノさんや自分のお父さんのこと・イタリアの世界で起きた話が中心になっている。長い作品であるがあっという間に読むことができる稀有な本である!皆さんもぜひ一緒に修行してほしいと思う作品であった!2023/01/10
佐島楓
71
すらっと頭に入ってくる文章は、対象を突き放しており、情に溺れることなく凜としている。それなのに、いや、だからこそと言うべきか、秘められた悲しみがダイレクトに伝わってくる。底流に在るのは、かつて時を共にした人たちとの別離。何度か、泣いた。2018/08/25
メタボン
44
☆☆☆☆ 「ヴェネツィアの宿」「トリエステの坂道」「霧のむこうに住みたい」のエッセイ集を収録。矢島翠の解説にもあったが、回想のパースペクティブによって綴られたエッセイは、回想によりその記憶が純化され、上質な私小説みたいな(みたいなは須賀敦子が良く使う表現)風合いとなっている。今回も気に入った文章に付箋をたてて読んだ。初読では響かなかった部分に感銘を受けたことが多かった。2022/11/09
U
42
『トリエステの坂道』と『ヴェネツィアの宿』を、図書館の本でよみ、手元に置くべき作品だと思ったので、購入した全集。昨日思い立ち、後ろにおさめられているエッセイのなかの、「"日本のかおり"を訳す」「パヴェーゼだって…」「想像するということ」をよんだ。今よんでいるナタリアの『ある家族の会話』がすごく面白くて、その作品にたいする彼女の思いを知ることで、一層愛着がわいたし、彼女が是非イタリア語に訳したいと思い、「日本の、ほんとうの一断面がある。」と絶賛した、庄野潤三氏の『夕べの雲』は、機会をみて一読したいと思った。2015/09/12
おさむ
40
私小説的エッセイという言葉がピッタリの須賀さんの名作「ヴェネチアの宿」「トリエステの坂道」が収録されています。お嬢さんだった筆者が異国で苦労を重ねて、馴染んでいった心象風景。日本とイタリアの2つの家族を見つめる鋭い観察眼。女性に人気があるのはその凛とした佇まいでしょう。同い年の向田邦子さんとはまた違った魅力がありますね。2016/05/23
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