内容説明
作風は優雅にして猥雑、生涯は華麗にしてスキャンダラス。20世紀アメリカ文学史上に燦然と輝く伝説の小説家ジュリアン・バトラー。しかし、ある覆面作家によって書かれた回想録『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』が刊行され、遂にその実像が明らかになる―。デビュー小説で読売文学賞を受賞し、各メディア絶賛の超話題作が、宇野亞喜良の装画で待望の文庫化!
著者等紹介
川本直[カワモトナオ]
1980年東京都生まれ。小説家・文芸評論家。2021年、デビュー小説『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』で第73回読売文学賞(小説賞)を受賞。同作は第9回鮭児文学賞、第2回みんなのつぶやき文学賞(国内篇第1位)も受賞し、各メディアで話題となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさ☆( ^ω^ )♬
16
今年読んだ本の中で一番面白かった。何きっかけで読もうと思ったのか忘れましたが、読んで良かった。何の予備知識も無かったので、序盤は本当のドキュメンタリーものかと思って読んでました。ジュリアンが実在の人物かと錯覚してしまうほど生き生きと描かれているのと、実在の小説家の面々との絡みが最高に面白い。ラストのジョージの日記にはホロりとさせられました。それにしても、また読みたい本が増えてしまったなあ。2024/11/04
Inzaghico (Etsuko Oshita)
14
壮大な虚構だが、それを支えているのが揺るぎない事実と真実。その質と量たるや、事実として存在するアメリカ文学(とイギリス文学)の作品と人物を、ここまで縦横無尽に展開するには、相当の学識がないと無理だろう。フィクションでこそあるが、アメリカ近現代文学史として読んでも抜群に面白い。いわゆるマイノリティ文学(民族的にも性別的にもジェンダー的にも。「アジア系アメリカ文学」というように、アメリカ文学の前にXXがつくものの総称として)が抵抗・対立からマジョリティとの同化へ、という流れも文中できちんと踏まえられている。2024/02/27
どら猫さとっち
10
これは面白い。優雅で猥雑、華麗なスキャンダラスな伝説作家、ジュリアン・バトラー。彼をめぐる実像の評伝小説。デビュー作で読売文学賞受賞、伝説の話題作が降臨。カポーティやメイラーなど、実在の作家が登場するので、これは現実なのか虚構なのか…。しかし不思議とその世界に入り込め、現実にいたら大変だけど、面白く愛おしい。日本文学史上、異色の超大作。2023/12/08
tenkawa
7
(3.5)重厚な小説の翻訳と長いあとがきの体。入れ子のこっちとあっちを思い浮かべながらの読書。現実のカルチャーの歴史の隙間に、ジュリアンとジョージのピースがすっぽり嵌っている。同性愛と文学が主軸。華やかでありたいジュリアンのその振る舞いは読んでて何かの幻のようだった。後日談のあとがきが面白かった。むしろこれを書くために、批評を存分に行うために、「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」は生まれたと言う側面もあるのでは、とすら思える。英米欧州の文学の歴史を知っていた方が楽しめそう。僕個人は全然詳しくないが。2024/05/16
nami1022
7
長かった。ページ数以上に長さを感じました。文芸評家の川本直先生の小説デビュー作。作品の構成というかスタンスがトリッキー過ぎて面白い。ノンフィクションを混ぜ込んだ壮大なフィクション。ゴアヴィダルやトルーマンカポーティをはじめ、名前は知ってるけど何を書いたのか、どんな作家なのか、20世紀の文学史を知っていればもっと楽しめたのかな、と。あと、舞台が舞台なので仕方ないのですが、固有名詞がカタカナばかりで疲れました。外国人の名前は性別も分かりません。。2024/05/14