内容説明
かつて華々しく活躍した名馬たちの「その後」を追う「旅路の果て」、競馬に魅せられ夢破れた人たちを追う「競馬無宿人別帖」、ほかに「さらば、テンポイント」「男の敵」を収録。いつまでも色褪せない傑作競馬エッセイが遂に初文庫化!
目次
男の敵―ジョン・フォードの映画を思い出しながら
あの馬はいずこに 旅路の果て(スイジン;ナスノオーカン;ヤシマライデン;バンライ;ユリシーズ ほか)
競馬無宿人別帖(こんな女に誰がした;子連れ狼の詩;お金をちょうだい;ロマンでメシが食えるか;酒場“でたらめ”の女 ほか)
著者等紹介
寺山修司[テラヤマシュウジ]
1935‐83年。青森県生まれ。詩人、劇作家。早稲田大学中退。54年「チェホフ祭」で「短歌研究」新人賞を受賞。67年、演劇実験室「天井棧敷」を設立、演劇の変革のリーダーとなる。75年、映画「田園に死す」で芸術選奨新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nemuro
43
「略歴」には「1935-83。青森県生まれ。詩人、劇作家。早稲田大学中退」。思えば、寺山修司のことは(何となく名前を聞いたことがあるだけで)ほとんど知らない。(で、競馬をやらないのになぜか)帯の「心打ち震える伝説的競馬エッセイ!」に惹かれて購入の本書。「かつて華々しく活躍した名馬たちの“その後”を追う『旅路の果て』と、競馬に魅せられ夢破れた人たちを追う『競馬無宿人別帖』などを収録」。1979年刊行の単行本(新書館)の文庫化で「寺山修司没後40年記念認定事業」。著者の競馬好きがビシビシ感じられ、実に面白い。2024/10/18
Porco
13
華美な大輪の華ではなく、花を添える名もなき草や一瞬で自分を見る目奪われてしまった哀しき花にも、負けず劣らず語る生はあるものだ。本書に出てくる馬や人は最初の「さらばテンポイント」と次ぐ「男の敵」で書かれた、どこかヒロイックで明るめな話とは裏腹に大半を占める「旅時の果て」以降の話は、ごく少数の華々しい名馬にかき消された馬たちと人の一生が垣間見えるが、それが悲喜交々というには垣間見える彼ら彼女らの人生には悲が多すぎる。嫌いではないが良し悪しの次元ではなくただそういうヒトやウマが在ったんだと感じた。(1/2)2023/12/01
Ex libris 毒餃子
11
競馬のエッセイも書いていたと読んだことがあったので、購入。昭和の浪花節みたいな感じです。スター馬ではなくひっそりと引退した馬たちの悲喜交々を市井の人の人生と重ねて描く。カウンターの寿司屋に行きたくなりました。2023/12/07
うさを
7
とても好きだった。まったくダメだという人もいるだろうとも思った。競馬のエッセイだが、華々しかったり、劇的だったりする話より、どこか地味で哀愁の漂う話が多い。負けた馬、負けた人。その「人」とは、競馬関係者ではなく、馬券を買う市井の人びとである。もう名も忘れられた馬たちがそんな人たちと並んで走っていく。2023/11/01
中山バスター
6
サラブレッドの引退後を追う「旅路の果て」、競馬に魅せられ夢破れた人々を描く「競馬無宿人人別帖」などを収録。涙なしでは読めない競馬名エッセイ集◆文才があり、競馬が好きで現実を見据えることでないと書けない物語でした。1頭1頭ドラマがあるというのは簡単。そんなドラマを追っていくとそれに関わる本当のドラマがある。この物語の時、自分は競馬を始めていないどころか、生まれてもいなかった。でも、その時代を生きている感覚になった。2024/01/27