内容説明
かつて華々しく活躍した名馬たちの「その後」を追う「旅路の果て」、競馬に魅せられ夢破れた人たちを追う「競馬無宿人別帖」、ほかに「さらば、テンポイント」「男の敵」を収録。いつまでも色褪せない傑作競馬エッセイが遂に初文庫化!
目次
男の敵―ジョン・フォードの映画を思い出しながら
あの馬はいずこに 旅路の果て(スイジン;ナスノオーカン;ヤシマライデン;バンライ;ユリシーズ ほか)
競馬無宿人別帖(こんな女に誰がした;子連れ狼の詩;お金をちょうだい;ロマンでメシが食えるか;酒場“でたらめ”の女 ほか)
著者等紹介
寺山修司[テラヤマシュウジ]
1935‐83年。青森県生まれ。詩人、劇作家。早稲田大学中退。54年「チェホフ祭」で「短歌研究」新人賞を受賞。67年、演劇実験室「天井棧敷」を設立、演劇の変革のリーダーとなる。75年、映画「田園に死す」で芸術選奨新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Porco
12
華美な大輪の華ではなく、花を添える名もなき草や一瞬で自分を見る目奪われてしまった哀しき花にも、負けず劣らず語る生はあるものだ。本書に出てくる馬や人は最初の「さらばテンポイント」と次ぐ「男の敵」で書かれた、どこかヒロイックで明るめな話とは裏腹に大半を占める「旅時の果て」以降の話は、ごく少数の華々しい名馬にかき消された馬たちと人の一生が垣間見えるが、それが悲喜交々というには垣間見える彼ら彼女らの人生には悲が多すぎる。嫌いではないが良し悪しの次元ではなくただそういうヒトやウマが在ったんだと感じた。(1/2)2023/12/01
Ex libris 毒餃子
10
競馬のエッセイも書いていたと読んだことがあったので、購入。昭和の浪花節みたいな感じです。スター馬ではなくひっそりと引退した馬たちの悲喜交々を市井の人の人生と重ねて描く。カウンターの寿司屋に行きたくなりました。2023/12/07
うさを
6
とても好きだった。まったくダメだという人もいるだろうとも思った。競馬のエッセイだが、華々しかったり、劇的だったりする話より、どこか地味で哀愁の漂う話が多い。負けた馬、負けた人。その「人」とは、競馬関係者ではなく、馬券を買う市井の人びとである。もう名も忘れられた馬たちがそんな人たちと並んで走っていく。2023/11/01
中山バスター
5
サラブレッドの引退後を追う「旅路の果て」、競馬に魅せられ夢破れた人々を描く「競馬無宿人人別帖」などを収録。涙なしでは読めない競馬名エッセイ集◆文才があり、競馬が好きで現実を見据えることでないと書けない物語でした。1頭1頭ドラマがあるというのは簡単。そんなドラマを追っていくとそれに関わる本当のドラマがある。この物語の時、自分は競馬を始めていないどころか、生まれてもいなかった。でも、その時代を生きている感覚になった。2024/01/27
玉瑛
5
競馬が好きなので購入。テンポイント、ハイセイコー、グリーングラス、自分が産まれる前だが名前を知ってる名馬の名前が登場するが、一方で前半メインで取り扱われたのは名が残らなかった名馬たちでもある。今でこそアーカイブ化されネットなどで競走馬のその後はある程度追えるが、それでも未勝利馬などは有耶無耶になることも多い。つくづく人間のエゴに振り回される競走馬だが、現代では自己満足のエゴが金を生んで引退馬達を生かしているのが救いか。人間が勝手に想いを乗せて走ることにこうも美しくも泥臭く表現出来るかと感心した。2023/12/12
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