内容説明
さらば。さらば、みじかき夏の光よ―。同じ夢を見続けた二人の男、ハムレット外伝、猫嫌いの男と空色の猫、石榴聖母の下に集う七人の虚々実々、少年の日の花鎮めの一夜、主と美しい奴僕達が迎えた最期。眷恋と別離が交錯する白昼夢へ。言葉の魔術師の神髄、目眩く傑作瞬篇集。
著者等紹介
塚本邦雄[ツカモトクニオ]
1920年、滋賀県生まれ。歌人、評論家、小説家。歌誌「玲瓏」主宰。51年第1歌集『水葬物語』でデビュー。三島由紀夫の支持を受ける。以後、岡井隆、寺山修司らと前衛短歌運動を展開し、成功させた。『日本人靈歌』で現代歌人協会賞、『詩歌變』で詩歌文学館賞、『不變律』で迢空賞、『黄金律』で斎藤茂吉短歌文学賞、『魔王』で現代短歌大賞を受賞。評論に『定型幻視論』『定家百首』、小説に『連彈』『藤原定家 火宅玲瓏』などがある。2005年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rinakko
6
まず絢爛、そして読むことの快感。とりわけルビ好きには堪らない。〈夏至遺文〉のお気に入りは「禽」(いきなり怖い!)や「葡萄鎮魂歌」、「僧帽筋」で、〈トレドの葵〉では「七星天道虫」と「凶器開花」、「虹彩和音」。特に「凶器開花」は、こういうの幾らでも読みたい…と思ったし、「虹彩和音」の一篇一篇に添えられた短歌はとても味わい深い(短歌落ち、みたいな)。皆川博子さんの「我が師 塚本邦雄」でとどめを刺された。2023/07/14
Porco
6
瞬篇小説というものを提唱した塚本邦雄が残した『夏至遺文』と『トレドの葵』をニコイチにしたのが本文庫である。河出文庫で先立って復刊してくれた『十二神将変』『菊帝悲歌』は既に読んだが濁流の様に押し寄せてくる難解な表現に疲れてしまい十全に楽しむことは難しかった。しかし、本文庫の特に『夏至遺文』では塚本邦雄の表現の巧みさを掌編という一つ一つの話が短い体裁をとっているおかげでかなり味わえた。復刊されている作品の中では1番読みやすく塚本邦雄作品の入門としては最も敷居が低い本と言える。 (1/2)2023/07/09
SATAN'S TOY
1
1ページ~5ページほどの掌編を中心に中編くらいのものも。おそらくフランスのコント集みたいなものを意識したであろう作品群は分からないものもあるが、落語やオペラを題材にしたものなど洒落っ気がうれしい。2023/06/25
ももいろ☆モンゴリラン
1
ときに見開きに満たぬ「瞬篇」小説の数々のなんと芳しいこと…「トレドの葵」の方は別の短編の登場人物があちこちに出てきて、あれどの話の誰だっけ…と後ろ髪惹かれているうちにその話も終わってしまうという。寓意がわかったので「風鳥座」がすき!2023/06/19