内容説明
この人にして初めて編まれえた、明治以降の怪談実話の集大成といえる決定版。著名人も多数登場。「佐倉連隊の怪異」「三原山紀行」「飯坂温泉の怪異」「浦戸署をめぐる怪聞」「松井須磨子の写真」など、名作全二三四話。タクシー、家屋敷、写真、軍隊、海山、因縁…現代の実話怪談の祖型がここにある!
目次
御紋章の異光
聖瑞
高千穂峰の霊異
勅語は畏し
白い服と赤い服
定紋の附いた提灯
中屋少佐
巣籠の鶴
戦死者の凱旋
佐倉連隊の怪異
弾薬庫の歩哨
鶴見大佐の怪異譚
母親に憑る霊
神馬
伊勢大廟の護符
神符と銀貨
鷹の奇瑞
皇軍を導く瑞鳥
鶏の瑞兆
死せる勇士の戦車操縦〔ほか〕
著者等紹介
田中貢太郎[タナカコウタロウ]
1880年、高知県長岡郡三里村(現・高知市仁井田)生まれ。作家。伝記物、情話物などを書くかたわら、怪談・奇譚の大家として一時代を築く。大町桂月、田山花袋、田岡嶺雲に師事。滝田樗陰に認められ、『中央公論』で活躍。1941年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒデキ
53
日本の実話怪談の走りと言われていたので 文庫になった時に購入しました。 淡々とした文章は、確かに実話怪談そのものだと思えてしまいます。 戦前の時代に書かれたものだなと思ったのが、 死が、割と近くにあるということと軍隊というか兵役が、 ある意味普通の仕事として描かれていることです。 面白かったです2023/07/04
ピンガペンギン
15
実話怪談ジャンルを切り拓いた労作とのこと。筆者は1880年現在の高知市生まれ。理屈抜きに怪談好きという筆者が聞き取った話や新聞に載った話など。2023/06/29
春風
8
怪談実話の嚆矢ともいえる本作。多様な文体で、あらゆる怪談実話の祖型を備えているといっても過言ではない短編集。玉石混交であり、時にオチのないただの世間話としか捉えられないようなものも収録されているのが玉に瑕か。収録作は大まかなジャンルごとにまとめられているようで、類話を相互参照しやすい構成となっている。個人的には、現代でも都市伝説的に語られる「タクシーの乗客が乗車中にいつのまにか姿を消し、座っていた座席が濡れていた」という物語の祖型に当たりそうな怪談がいくつか見られたのが特に面白く読めた。2024/02/15
澤水月
6
明治の新聞記者出身だけあって簡潔、要を得ていながら情味溢れる。当時の猿之助係累が「喜熨斗くん」と呼ばれており今と繋がり感じハッと。谷崎の原稿取り時の編集者体験や泉鏡花、長谷川時雨、松井須磨子巡る話などオールスター感。これまで何度も読み挑み挫折していた、冒頭に日露戦従軍時の話が並び「神威」や天皇の瑞兆話多いのが苦手だったが没年が終戦前と知り価値観は全く異なる価値観だしそういう物書かないと「子、怪力乱神を語らず」の風潮であろう中発表できなかったかもと納得した。タクシー怪談やスポット凸など全く今の雛形2024/03/23
眉毛ごもら
2
明治〜昭和の実話怪談。怪談ではなくて人間の仕業だったり、事案や事件では??というものもあり背景を考えると面白い。有名人の関わる怪談もあったりするのでその人のことを調べたりするのも楽しかった。全国の怪談を集おり、知っている地名や施設名が出ていて過去にそんな事があったのかと不謹慎だがワクワクしてしまう。怪談としては江戸時代を引きずっているものも多いが開明的な人物が出てきてしてやられるとか警察が捜査したりとか近代的である。当時有名な事件であろうがネットで探しても出てこなかったりするのは時間の経過を感じれて良い。2024/05/08