出版社内容情報
マニアたちが熱愛する雑誌『詰将棋パラダイス』。その創刊編集長の生き様と、そこに集う数奇な人々の群像を活写した愛の物語。単行本版に大幅に加筆した決定版。棋譜多数。解説=芦沢央。
著者情報
1952年京都生まれ。京都大学名誉教授。英米文学研究者、詰将棋・チェスプロブレム作家。著書に『盤上のフロンティア』、訳書にナボコフ『ロリータ』『ディフェンス』、パワーズ『黄金虫変奏曲』(共訳)など。
内容説明
マニアたちが熱愛する雑誌『詰将棋パラダイス』初代編集長の豪放磊落な生き様と、そこに集う数奇な人々の群像を活写した「愛の物語」。作品完成に命をかける詰将棋作家、暗い森の中をさまよう解答者、悪魔のような検討者、天才棋士から病中の老爺まで。詰将棋界の第一人者が描く、笑いと涙の詰まった天国にいちばん近い島。
目次
1 詰将棋とは何か
2 詰パラとの出会い
3 鶴田主幹
4 詰パラの歩み
5 詰将棋作家
6 解答者
7 検討者
8 読者
9 主幹の死
10 新編集長の誕生
著者等紹介
若島正[ワカシマタダシ]
1952年京都生まれ。京都大学名誉教授。英米文学研究者、詰将棋・チェスプロブレム作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
58
詰将棋専門の同人誌『詰将棋パラダイス』の歴史を語った、1988年刊行の相当にマイナーな本が、35年後の2023年に、嬉しいけれど驚きの文庫化。さすがサブカル出版社の河出書房新社だけのことはある。ただ、単行本で読んだ時ほどの面白さを、今回の再読では感じなかった。あの頃は、将棋ファンではあったが、詰パラのことをまったく、知らない自分であったからなあ。文庫版の新あとがきには、元本の「三一将棋シリーズ(団鬼六の書籍などを刊行)」が生まれた背景に、「昭和軽薄体」ブームがあったと分析がされている。2023/04/10
Sam
47
著者は英米文学者、翻訳家としての方が有名なのかもしれないが、自分にとっては詰将棋作家。いまはなき「近代将棋」でときどき見かけた記憶がある。「詰パラ」に縁はなかったが、本書で描かれる奇人変人の数々、詰将棋の変遷など、なかなか興味深かった。興味深いといえば文庫化に際して書かれた「補遺」で藤井聡太くんが登場。詰将棋解答選手権(著者が創設者とのこと)に突然現れた天才小学生に驚愕したことが生々しく描かれている。もっというと「解説」は芦沢央。「神の悪手」はよくできた作品と思ったが、同氏が詰将棋ファンとは知らなかった!2023/04/30
緋莢
16
図書館本。詰将棋はアプリでたまに3手詰めぐらいまでの簡単なものをやりますが、凝ったものはやりませんし、ましてや作ろうなんて思ったこともありません。しかし、この本を読むと、『詰将棋パラダイス』という雑誌があり、詰将棋を解くのも作るのも大好きな人がこんなにいるのか!と驚きます。初代編集長の鶴田諸兄は、明治生まれで八か月だけだが特高警察勤務という異色の経歴の持ち主。 雑誌に掲載された問題をプロが盗作していたなんて事もあったようです(続く2024/06/15
kane_katu
5
★★★★☆若い頃かなり将棋には熱中していたのだが、詰将棋にはそれほどハマらなかった。だからなのか、昭和63年に出たこの本も未読だった。今回文庫になったということで購入。まあ、面白かったね。色々書こうとすると、とてつもなく長くなってしまうのでやめるが、とにかく面白くて懐かしかった。2023/06/12
longscale
3
作り手と読者だけで成立するのは、雑誌発行の理想。広告収入に頼らず、書店への取次業者も介さないので、シンプルな関係を築ける。そんな世界を実現した奇人変人たちが、無性に羨ましい。「学校」をつくって協力者を巻き込んで……なんて、夢みたいな話だ。問題は新規読者をどう獲得するかで、読者数がどう推移していたかは気になった。いるのかいないのかもわからない「不特定多数」ばかりが意識される世界よりも、ずっと健全に思えてならない……。将棋については下手の横好き。自分には最も持ち合わせの少ない能力が試されるので、逆に惹かれる。2023/06/05