内容説明
ヘーゲル哲学の最大のテーマは、自由である。彼は、自由の可能性をもっとも深く考えた哲学者の一人であり、そのメッセージは決して古びていない。『精神の現象学』、『法の哲学』…難解とされるヘーゲル哲学を丁寧に読みほぐし、現代の私たちに響く思索としてたぐり寄せた名著『ヘーゲル・大人のなりかた』を改題・大幅増補した決定版。
目次
序章 ヘーゲルってどんな人?
第1章 人々が熱狂した近代の夢―自由・共同性・道徳性
第2章 愛は世界を救えるか
第3章 自己意識は自由をめざす―『精神の現象学』の構想
第4章 わがままな意識は大人になる―自己意識から理性への歩み
第5章 私と世界の分裂と和解―精神の歴史的な歩み
第6章 制度の根拠はどこにあるのか―家族・市民社会・国家
終章 ヘーゲル哲学をどう受けつぐか
著者等紹介
西研[ニシケン]
1957年、鹿児島県生まれ。哲学者。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。現在、東京医科大学教授(哲学教室)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かわかみ
7
NHKブックス「ヘーゲル・大人のなり方」を加筆・改題したもの。卑近に例えれば、大人になるとは厨二病的に肥大化した自意識を卒業して他人を理解し、世間と折り合いをつけて自分の居場所をつくること。そうした意識の成長を「精神現象学」を辿ることで、世間についてルソーを振り返りながら「法の哲学」を読み解くことで、ヘーゲルを糧とするための書。ルソーもヘーゲルも古代アテネを理想またはモデルとして国家社会と個人のあるべき関係とその条件を考えた。自由と普遍性を両立させることがその眼目である。ヘーゲルの入門書として優れている。2024/07/07
YT
7
知と認識の発展を目指す哲学者ヘーゲル、彼の精神現象学と法の哲学の外枠を描き出す作品。 難解なヘーゲル用語もあまり使われておらず読みやすい。 理想と現実をすり合わせ普遍性を獲得していく、その過程で精神が大人を目指す物語のようにも読めた。旧題である大人のなりかたは秀逸だな、と。 自由競争を是とする近代社会の競争関係から逃れる戦略のうまく行かなさは、ドストエフスキーの白痴を読んでいたのでイメージが捉えやすかった。 社会との関わり方に悩んで生きづらさを関していたのでヘーゲルの哲学をキーに思考を深めていきたい。2023/10/11
植岡藍
2
精神現象学を中心にヘーゲルの思想を読み解く本。読みやすい上にかなり面白い。ヘーゲル解説でありながら時々著者が登場し疑問や今の時代での考え方を補助してくれ、これ自体が一つの哲学になっている。長年積んでいる精神現象学にそろそろ取り掛かりたいと読みながらわくわくする本だった。2023/04/27
ゴリラ爺
0
表紙のヘーゲルの絵がザブングルの加藤に似ていると感じるのは私だけだろうかーーそんな疑問と共に書店で私を惹きつけた本書は1995年にNHKブックスから出版された『ヘーゲル 大人のなり方』の増補版である。主観的精神が客観に開かれてゆき絶対に至る過程を精神の現象学として描きだした『精神現象学』の他、青年時代の草稿や『法の哲学』を噛み砕いて説明しながらヘーゲル思想を順に辿る入門書だが、著者の若書きのせいかいかんせん浅い印象だ。ヘーゲルを考えるよりもヘーゲル主義の失敗がどこにあったかを考えた方が楽しい気もする。2023/07/27