出版社内容情報
夫の高之を熊谷に残し、札幌へ単身赴任を決めた沙和子。夫婦であっても共有しえない孤独と優しさを抱えた二人は次第にすれ違い、離別を選ぶことになったが……。
著者情報
1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。
内容説明
夫の〓之を熊谷の実家に残し、札幌へ単身赴任を決めた沙和子。お互いを思いやる気持ちはあれど、一緒にいる理由が薄れ、別れを選ぶことに。岡山、滋賀、函館…ときに一緒に、ときに別の相手と訪れた土地で、改めて出会うもうひとりの自分。再会後に訪れた奥出雲で、二十五年の歳月に導かれたふたりは新しい愛と信頼のかたちを見つける。
著者等紹介
絲山秋子[イトヤマアキコ]
1966年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、住宅設備機器メーカーに入社し、2001年まで営業職として勤務する。2003年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2004年「袋小路の男」で川端康成文学賞、2005年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年「沖で待つ」で芥川賞、2016年『薄情』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小夜風
24
【所蔵】物語は2010年から始まり一度1998年に戻って最後は2022年に。読後にこの本はコロナ禍以前に書かれていてこの2022年はコロナを経ていない2022年なのだと気がついて驚いた。最初あらすじの「25年の歳月に導かれたふたり…」という言葉に惹かれて手に取った。我が家は今年銀婚式らしい。25年は手に取れる程近いようにみえて二度とは戻れない遠い場所だ。この本はふたりの会話や思いがあまりにリアルで自分の感情まで連動してしんどかったけど、旅の情景はまるで目の前に広がるようで、いつか本当に見てみたいと思った。2023/11/20
こばゆみ
12
高之・沙和子夫婦が辿った場所、それぞれを舞台にしたお話。場所の名所や景色が淡々と出てくるので、お話というよりルポタージュのような印象を受けた。映画を観ているような気分になれる、素敵なお話でした(^^)2022/12/26
miu
11
時間と場所を変えながら交互に語られる2人の関係と思い。鬱を患い職を失って義父母の実家に残る夫の高之とキャリアを重ね札幌で単身赴任をする妻の沙和子。わたしがあなただったら、僕が君だったら、そんなセリフが幾度か聞かれる。相手を慮るということは、時として自分の不完全さをあらわにする。2022/11/16
ちぇけら
10
旅というのは不思議な行為だ。非日常を求めて向かった旅先も、そこは誰かにとっては単なる日常で、そして今は歴史的に価値があるとされる建造物なども、かつては日常のなかに溶け込むいち建物に過ぎなかったのだ。土地や時間はずっと続き繋がっていると思っていたが、実は断続的な瞬間の連続なのだろう。秋には夏と冬とが含まれているように、おれには過去も未来もあるけれど、今この瞬間は、今この瞬間しかない。だから、悲しいことも苦しいことも、いつかは止むのだ。おれはひとりぼっちだったけれど、今はものすごく、会いたいひとがいるように。2023/10/08
ほんどてん
7
高之は婿養子で沙和子の実家で夫婦は暮らしていましたが、沙和子が北海道に転勤になって、夫が妻の実家に残ることになります。そこから先の物語には二人の選択で、いろいろな風景が待っていました。魅力的だと思ったのは、様々な土地が出てくるので、まるで一緒に移動しては、その土地の暮らしや名所、名物などを堪能出来るところです。そして家族や夫婦の形はそれぞれで、優しさや大切なことにも気づかせてくれるというとても素敵な物語だと思いました。2022/12/23