出版社内容情報
外岡 秀俊[ソトオカ ヒデトシ]
著・文・その他
内容説明
中学卒業後、北海道の炭鉱町から東京に集団就職した私。だが町工場での「事故」により、職を失ってしまう。やがて私は、石川啄木の足跡を辿りながら、再びふるさとへと向かうが…急逝した外岡秀俊が東京大学在学中に書いた、第13回文藝賞受賞作。文学史上に輝く青春小説の金字塔。
著者等紹介
外岡秀俊[ソトオカヒデトシ]
1953年~2021年。作家・ジャーナリスト。札幌市に生まれる。76年、東京大学在学中に書いた『北帰行』で、第13回文藝賞を受賞しデビュー。同じ年にデビューした村上龍とともに、大きな注目を集めた。77年、朝日新聞社入社後、小説活動を休止。ヨーロッパ総局長、東京本社編集局長、編集委員などを歴任し、2011年退社。その後、中原清一郎名義で『カノン』『ドラゴン・オプション』『人の昏れ方』など、次々と小説を発表した。ジャーナリストとしても活躍し『3・11複合被災』『発信力の育てかた』『価値変容する世界』など著書多数。2021年、68歳で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海燕
15
これから先、このような作品にどれだけ出会えるだろう。もっと早く読んでいたら、とも思う。著者は北海道出身、大学在学中の1976年に本作で文藝賞。朝日新聞に入社後は小説活動を休止するも、退職後、別名義も含めて再び小説を著す。21年に鬼籍に入る。主人公の「私」は北海道の炭鉱から上京し就職するが、曲折を経た後に心酔する啄木の足跡を辿り故郷に向かう。啄木の思想に重ねながら、当時の社会や政治への冷徹な分析があり、重たく読み応えがある。さておき「雪国」を思わせる冒頭や、終盤の冬の浜辺の場面などの叙述は美しい映像のよう。2024/06/29
嫁宮 悠
4
故郷を飛び出し、都会で挫折を味わった青年が、石川啄木の足跡と自らの過去を重ね合わせながら、再び故郷へと帰る。暗い青春と「啄木論」を〈足した〉ような小説。〈かけ合わせた〉とはあえて言わない。それぞれを理解することは容易いけれど、両者を繋ぐものが観念的過ぎて、私には半分も理解できなかったし、共感もできなかった。2022/11/07
だんだん
2
違う時代に生まれ育ったので、北海道の厳しい炭鉱村での生活だったり集団就職だったりの世界はかなり隔世の感があったが、それでも、石川啄木と主人公の重なる北への旅であり、卓也・ジルゴ・由紀との関係なんかが重なり合い情感的な内容だった。文学な感じで少し自分には難しかったようにも思いつつ。2023/12/25
かわくん
2
北海道出身の青年のモノローグの形で進む物語である。少年期から啄木の歌に触れ、青年期に啄木の足跡をなぞるように帰省する。読んでいて違和感があったのは、言い方は悪いが中卒で肉体労働に就いた青年がなんと難しい言葉を使って心情を語っていることだ。淡い恋、友との別れなどが描かれるが、哲学的な言葉が次々と語られる。大卒の人間でも使わないような言葉がさまざま出てくる。最後まで違和感があったのは私の偏見なのだろうか。2023/01/16
takataka
1
★★★★☆昨年急逝した元新聞記者で作家の大学時代に文藝賞を受賞した小説と知り読んでみた。1976年に発表されたという当時の時代的なものもあるのだろうか、作品での主人公は父親が北海道の炭鉱に勤めていたが事故で亡くなる。中卒で東京で働く彼は石川啄木の短歌を自己の支えとしていた。彼の生い立ち、成長と挫折、啄木の軌跡を辿る旅、青春のもどかしさが溢れている。2022/10/26