出版社内容情報
能楽をモチーフとした、著者最愛の作品集(「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」を収録)。河出文庫版の新規あとがきも掲載。
内容説明
百本書いたら、僕のものに―墓地に住み着いたホームレスの老婆が語った懺悔めいた告白「卒塔婆小町」。二人に愛された挙句どちらも選べず破滅に向かう女性の悲劇を娘の視点から描いた「浮舟」ほか、能をモチーフに現代の不可能な愛のかたちを研ぎ澄まされた静謐さと激情で美しく繊細に紡ぎあげた珠玉の現代能楽集三篇。河出文庫版あとがきも特別収録。
著者等紹介
中山可穂[ナカヤマカホ]
1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
26
ギリシャ悲劇と同様、能もまた、その深さと象徴性ゆえに、無限の再解釈と語り直しに耐える芸術なのだろう。現代能楽集とでも名づけたい三つの中篇の中でも、とりわけ、二人の人に愛されつつ、自らは死への宿命的なまでの傾きを抑えられない源氏物語の女性に材を取った「浮舟」が、意外であざやかな換骨奪胎と、静かな狂気さえ感じさせる恋の深淵の探求において、印象的だった。愛する人のなきがらを病院からかつぎだして海辺をドライブする場面が鬼気迫る。読んでいるあいだ、シューベルトのD894のピアノソナタが脳内で無限再生していた。2024/08/17
ア・トイロッテ(マリポーサとも言う)(各短編の評価はコメントで)
20
★★★★★10 中山可穂の作品を読んでいると、本当に魂を削っているようだと実感する。著者のあとがきに、「かなわぬ恋ばかり書いたのは、当時の自分がかなわぬ恋をしていたからに他ならない」とある通り、この作品は一種の私小説とも受け取れた。特にラストを飾る「浮舟」は著者の心情が作中の薫子に重なるようであり、ラストに近づくにつれて痛々しさを感じた。収録の三編はどれも心に対する影響が大きすぎた。傑作というほかない。2023/03/14
のあ
20
愛についての短編集、すごく読みやすかった。 重く暗い愛なのに醸し出される切実さと儚さが純白の愛にみえる。 独特な読み応えと読後感でした。 卒塔婆小町が特に好きでした。2022/06/13
双海(ふたみ)
12
能をモチーフに、現代の不可能な愛のかたちを研ぎ澄まされた静謐さと激情で美しく繊細に紡ぎあげた中篇小説集。収録されている三篇の中では「浮舟」がいちばん好き。二人に愛された挙句どちらも選べず破滅に向かう女性の悲劇を娘の視点から描いている。実に秀逸な短篇であり、絶版という本の墓場から河出書房新社が掬い上げてくれたことに一読者として感謝。2024/06/12
フラチキさんです
5
★★★★★☆ 初読み作家さん。2024/07/31