出版社内容情報
森鴎外の名作「舞姫」のヒロイン・エリスのモデルとは果たして――日本文学史上最大の謎に迫る傑作が、大幅な加筆修正の上、文庫化!
内容説明
「エリスにたどり着くまでの道のりは、蜘蛛の糸をたぐり寄せるような、心許ない作業のくり返しだった。夏のある日の夕方、それは一丁の拳銃から始まった」予期せぬことがきっかけでスタートした「舞姫」エリスのモデル探し。日本文学史上最大の謎・エリスの真実が一三〇年の時を超え、いま明らかになる。謎解き「舞姫」、待望の文庫化。
目次
第1章(はじまり;森〓外とベルリン留学 ほか)
第2章(「エリス」の実像;エリーゼがユダヤ人である可能性 ほか)
第3章(エリーゼ探しの第一歩;乗船名簿 ほか)
第4章(市立博物館;エリーゼの職業“Modistin”の謎 ほか)
第5章(思わぬ発見に向かって;〓外の下宿とその事情 ほか)
第6章(エリーゼとの対面;エリーゼの実像 ほか)
著者等紹介
六草いちか[ロクソウイチカ]
1962年、大阪府吹田市生まれ。88年よりベルリン在住。2000年より雑誌やガイドブック、専門誌等にドイツの観光情報やライフスタイル、映画関連の記事を執筆。07年よりベルリンの歴史や日独交流史を学びノンフィクション分野に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
63
教科書に掲載され、高校生はたいてい一度は読まされる「舞姫」。しかし小説のモデル、実在した「エリス」とは誰だったのか? 著者はふとした偶然からエリスを探し、ドイツ在住の地の利を生かして、ベルリンに残された記録を追っていく。女性の視線でエリスへの男性目線の論を退けながら、歳月の流れと大戦中の空爆による焼失という困難を乗り越えて、乗船名簿や古地図、洗礼記録、マイクロフィルム等々、何度も途方にくれては史料を尋ねあてる。文学探究は第一級のミステリだ。鷗外が現実からずらせながらも、かなり忠実に描写していたことも驚き。2020/06/20
yoshimi
20
何かに取り憑かれたかのように『舞姫』エリスのモデルだった人物を探し出そうとする著者の胆力に頭が下がる思いがした。教科書で読んだ舞姫は「文豪と呼ばれる作家が書いた作品がこんなにゲッスい色恋モノでいいのか??」という印象で、文壇という世界の価値観をごっそりひっくり返された記憶がある(笑)。いまだにその印象は拭えないけど(すみません)、本書を読んだからこそ舞姫を再読したいという欲求が湧いてきた。それにしても自分の恋愛沙汰を小説にしたためて、それを家族の前で朗読する鴎外の拗らせ具合が大変興味深い。2020/07/10
oooともろー
4
この本自体がドラマ。筆者の執念に脱帽。2022/06/11
るき
4
高校3年生でやる『舞姫』。六草いちかさん、国語便覧にも載ってました。『舞姫』に何か思うことがあれば読んでほしい(大体豊太郎に怒りを覚えると思うけど)。エリスがいたドイツでのエリス探し。文学探究の面白さが伝わってきます。あきらめようと思うと手掛かりが現れるの連続で、テンポよく読めました。ネットでこの論争も読めました。いい時代だわ。2020/06/17
Gen Kato
3
鴎外の一族が書いたエッセイはけっこう読んでいるのだけれど、小金井喜美子の「エリス」評は本当に不快だった。だからこの一冊は嬉しい救いの書。「豊太郎」=林太郎とのあいだで実際になにが起こったか、話し合われたかを「エリス」=エリーゼに訊くことは決して叶わないけれど、彼女のその後の人生をもっと知りたいと思わされた。2021/09/01




